賃貸経営の悩みをシェアリングエコノミーで解決?
少子高齢化が進み人口減少が顕著となる中で、賃貸経営はこれから厳しくなることが予想されます。しかし、この数年で市場が拡大している「シェアリングエコノミー」を活用することで、今後の賃貸経営に新たな活路が広がる可能性もあります。
今回の記事では、普及が広がっているシェアリングエコノミーについて詳しくご紹介するので、入居者付けや空き家の活用などで悩んでいる不動産オーナーの方は、参考にしてみてください。
シェアリングエコノミーとは
今はモノを保有するよりも、必要な時に借りるというスタイルが浸透しつつあります。ICT(情報通信技術)プラットフォームの普及によって、商品やサービスを保有する個人と、それを利用したい個人とのマッチングが可能になったことなどが背景にあります。
特にインターネット上のマッチングプラットフォームを利用して個人が行える経済活性化活動を、「シェアリングエコノミー」と呼びます。
アメリカの配車サービス「Uber」や旅行者に部屋を提供する「Airbnb」などが有名なシェアリングエコノミーサービスですが、そのほかシェアハウスやカーシェアリングといったサービスも普及しています。いずれも個人がモノや時間などを提供し、それを必要とする人とマッチングするサービスです。
これらのほかにも個人が持つ時間やモノを細かく貸し出すことができるようになっています。衣類やベビー用品など使わなくなったもの、部屋の押し入れや駐車スペースなども貸し出すことができます。使っていない時間やモノ、空間を効率よく活用するこの流れは広がりを見せています。
シェアリングエコノミーの種類
2015年12月には、一般社団法人シェアリングエコノミー協会も設立されています。シェアリングエコノミー協会では、シェアの対象となるものを次の5つに分類しています。
①空間(空き家や駐車場など)
②移動(自家用車や自転車など)
③モノ(不用品や使っていないものなど)
④スキル(空いている時間を使い解決できるスキルを提供)
⑤お金(金銭を貸し出す)
そして、不動産業界でも注目されているのが、①空間を利用したシェアリングエコノミーです。
①空間を利用したシェアリングエコノミーとは、新しいライフスタイルに合わせた住まいのあり方を提供する不動産テックサービス(民泊業界No.1のAirbnbなど)が代表的な例です。
シェアリングエコノミーにおける法規制
ただし、シェアリングエコノミーの仕組みが法的に問題はないのかといった指摘もあります。例えば「お金」を貸すためには、貸金業者としての登録が必要です。お金の貸し借りは「ソーシャルレンディング」というサービスが仲介していますが、貸し手と借り手それぞれと契約を結ぶことで対応しています。
「空間」の貸し借りでも、民泊のように法規制がかかる場合があるので注意が必要です。民泊は、2018年6月に公衆衛生の確保や地域住民等とのトラブル防止を目的とした住宅宿泊事業法(=民泊新法)の対象となっています。
そのほかのシェアリングエコノミーでは、仲介するサービス側で法的な対応はしていますが、これから提供する側としても法規制やルールなどは最低限知っておくことが大切です。
賃貸経営に悩むオーナーが増えている?
日本は人口が減少に転じて、少子高齢化が進むと予測されます。総務省行政評価局が2019年1月に発表した「空き家対策に関する実態調査結果報告書」によると、空き家率は年々増加し、1993〜2013年までの間に、全国の空き家率は9.8%から13.5%へと上昇しています。
空き家率と賃貸経営とは直接的に関係があるわけではありませんが、住宅と居住者という、いわば供給と需要を考えると明らかに賃貸住宅の需要は減っていることがわかります。さらに今後、少子高齢化が進み人口が減少することを考えると、賃貸経営に悩むオーナーが増えることも考えられます。
また、人口が一部の都市に集中していることから、地方都市で賃貸経営をしている人は、入居者付けがさらに難しくなる可能性もあります。特に相続税対策でアパートを建設したなどの場合では、ライバル物件も多く建設されているので入居者付けに苦労することが予想されます。
シェアリングエコノミーを賃貸経営に活用するには
シェアリングエコノミーの普及により市場は拡大しています。一般社団法人シェアリングエコノミー協会の発表によると、2018年度のシェアリングエコノミー市場規模は1兆8,874億円となり、2030年には11兆1,275億円になると予測しました。
海外からの旅行者を対象にした民泊もシェアリングエコノミーの一種であることから、従来の賃借人とは異なる需要が賃貸経営市場に流れ込んでくることが考えられます。つまり、ある程度の期間で居住することを前提に賃貸物件を選ぶ需要から、一時的に不動産を利用するという新たな需要を生み出すことができるということです。
シェアリングエコノミーには「空間」もサービスの一つとなっています。貸し出すのは生活空間としての部屋だけでなく、モノを置くスペースや小規模店舗を貸し出す軒先ビジネスといった場合もあります。
このように貸し出すものを変えることによって、新たな需要を掘り起こすことが可能となります。これまでは居住空間として貸し出していた部屋も、会議室やイベントスペースとして利用することも可能です。
賃借人の募集や料金の授受などの業務については、専門業者(サイト)が代行してくれます。あとはオーナーが保有する物件をどのような目的に貸し出せるのかを工夫するだけという仕組みです。賃借人の募集においても、シェアリングエコノミーサービスそれぞれの集客力を比較することになるでしょう。このような仲介サービス選びも、賃貸経営で大事な要素となります。
今後の賃貸経営で大切なこと
シェアリングエコノミーの活用を視野に入れた上で、今後の賃貸経営で重要になるポイントを見ていきます。
多様化する住まいのカタチ
これまでの賃貸経営といえば、アパートやマンションを建設して居住空間として貸し出すとか、あるいは駐車場として貸し出すというように用途を決めた上で行うのが一般的でした。
しかし、シェアリングエコノミーが普及することで、借り手も様々な用途で自由に賃貸物件を借りることができるようになっています。会社での働き方も、固定席を決めないフリーアドレス制の導入が進んでいます。オフィススペースも固定されたものではなく、多様性を帯びるようになってきています。住まいにおいても、従来の2年更新による固定された契約ではなく、自由度の高いサービスが求められるようになっています。
例えば、定額制の「多拠点居住サービス」というものも誕生しました。空き家や別荘などをオーナーから買い取り、あるいはサブリース契約を結んで会員に提供するというサービスです。会員は毎月定額料金を支払うことで、提供されるさまざまな部屋に住めるようになります。
このような流れを利用して、借り手となる人の生活スタイルや時代の変化に応じて賃貸経営のカタチも変えていくことが大切であると言えます。
賃貸経営でシェアリングエコノミーを導入する際の注意点
もちろん従来のアパートやマンションをいきなりシェアリングエコノミーとして活用するのは難しいかもしれません。というのも、空き部屋があるからといって不特定多数の人にいろんな用途で貸し出すことには、ほかの住人から反対が出る可能性もあるからです。
不特定多数の人間が出入りすることで、セキュリティ面での不安も生まれます。さらに居住用ではなくイベントスペースとして利用されると、騒音などの問題も出てきます。そのため、アパートやマンションを一棟まるごとシェアリングエコノミーに活用するといったような工夫も必要になるでしょう。
シェアリングエコノミーを導入する際は様々な課題もありますが、賃借人がなかなか付かないような物件なら、シェアリングエコノミーとしてどのように活用できるかを検討する余地があるでしょう。
立地条件によっても、対象となる需要者は変わります。居住用として貸し出すのか、あるいはオフィスや店舗として貸し出すのか、貸し出す期間はどのくらいなのかと複数のパターンが考えられます。これから不動産を購入して賃貸経営をする場合にも、事前に見込める需要を調査することが大切です。
まとめ
モノを所有せずに必要な時に借りるシェアリングエコノミーの普及に伴って、賃貸経営は新たな需要を掘り起こす可能性があります。不動産オーナーとしては人口減少という逆風の中でも収益を確保する新しい手段として、必要な時に・様々な用途で貸し出せるシェアリングエコノミーを検討してみてはいかがでしょうか。