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不動産所有者が考えるべき相続税対策と争族対策

不動産 相続 争い

2015年の相続税改正で基礎控除の見直しや相続税率の引き上げなどが行われ、金融緩和やマイナス金利も影響し、相続税の節税目的で不動産投資や郊外アパート・マンション建設が盛んに行われました。

富裕層や不動産を多く所有する資産家の方々にとってみれば、相続税という税金から築いた資産を代替わりさせるための節税対策は大きな課題です。

しかし、その前に考えるべきことがあります。

それは円満な代替わりをするために必要な遺産分割の問題です。

相続争いが起きる原因は、財産の多い・少ないや、兄弟姉妹の仲の良さは関係ありません。

 

相続対策では「遺産分割対策」を優先すべき理由

相続対策には3つの柱があります。

 

●遺産分割対策

●納税対策

●節税対策

 

3つとも考えるべき相続対策の柱ですが、中でも「遺産分割対策」が一番重要です。

どんなに節税できても、残された家族で財産争いが起きたら「何のための節税対策だったのか?」という事になってしまいます。

つまり、残される家族関係が崩壊しても良いという節税対策はあり得ないからです。

そのためにも、ご自身の財産は円満に家族で分割できるように示しておく(道筋をつくっておく)ことも重要な対策となり、遺産分割がスムーズに行われるようにしておくことは、残される家族に対して必要な愛情です。

相続対策とは、相続「税」対策ではありません。必ずしも相続税を少なくすることが最良のケースとは言えない場合があります。まず考えるべきは、もっとも大切な遺産分割対策です。

 

財産が多い・少ないや兄弟姉妹の仲の良さは関係ない?

現実的には「うちの家族は仲が良いから」「うちの子に限って」あるいは、「財産がないから」という理由で相続問題は関係ないと思われている方が大半です。

しかし、実際には相続税が発生しないだけであって、相続の問題は誰にでも起こり得るのです。

日本における相続財産は年度によって変動があるものの、不動産が50%以上と言われています。不動産は金融資産と異なり、分割しにくい資産の筆頭です。

例えば、家庭裁判所における遺産分割事件において、遺産総額別の割合を見ると、遺産総額1,000万円以下で30%以上、遺産総額5,000万円以下で合計70%以上と言われています。

つまり、実際に遺産分割の争いが起きた件数の内、遺産総額5,000万円以下のケースが70%以上となり、財産が多い・少ないは関係がないことが分かります。

 

遺産分割対策とは?

遺言書の作成

遺産分割対策とは、まず誰がどの財産を相続するのか明確にすることです。

「なぜそのような遺産分割にしたのか?」という理由を残しておくことも大切です。

その手段として遺言書を残しておく方法があります。

 

例えば、

  • 妻に全財産を相続させたい
  • 介護で世話になった次男の嫁にも財産の一部を渡したい
  • 家を継ぐ長男に財産の多くを渡したい

 

といった偏った遺産分割の意向がある場合や、「財産は分割しにくい不動産が大半」などの場合、特に遺言書は有効です。遺言書がなければ、相続人による分割協議を行う必要があるため、争いごとが起きる可能性が高まります。

正式な遺言書があれば、基本的には遺言書通りに財産は分割されるのです。家族関係が悪化すれば、残された家族が互いに嫌な思いをすることになりますので、円満な代替わりをするためにも事前の準備は大切です。

注意すべき点もあります。

遺留分という、相続人が最低限相続できる権利があることを知らない人はいません。

「私にももらえる権利がある」という気持ちが相続人には少なからずあることを理解して下さい。自分には全然相続分がない遺言書が出てきたとすると、どのように思うでしょうか?

しっかりとした理由がなければ、遺留分という権利の元、「遺留分減殺請求」を起こされる可能性があります。遺言書をつくる際には家族円満に相続が行われるように配慮し、遺言書に示した分割の理由をしっかりと残しておくことが重要です。

また、遺言書の書き方には一定のルールがあります。

そのルールを守っていなければ無効となってしまいますので、遺言書は公正証書遺言をお勧めします。

 

遺産分割を想定し、分割しやすい財産形成にしておくこと

遺産分割を想定し、分割しやすい財産形成にするためには、ある程度の金融資産を確保しておくことや生命保険なども活用できます。また、不動産も分割しやすくしておくことが大切です。

不動産を平等に共有で相続する方も稀に見受けられますが、後々の土地活用や売却に支障があるため、問題の先送りでしかありません。安易な共有は避け、権利関係をすっきりさせた遺産分割が可能な財産にしておくことが重要です。

例えば、相続人が妻・子ども2人の場合、平等に1棟ずつ木造アパートを相続できるようにしておくことも一つです。土地の有効活用や不動産投資による節税対策も、遺産分割の視点から考えることが大切です。そして、そのアパートがしっかりと収入を生み出す安定経営が出来ていることが重要です。

子どもたちのことを考えて相続税の節税ができても、「借金のあるアパートはいらない。現金が欲しい」と考える相続人の声もよく聞きます。

相続税の節税目的だけではなく、アパートが安定収益を生み出すことにより、受け継いだ子どもたちにとってもプラスになる資産であることが大切です。

 

納税にも配慮した遺産分割

相続税の納税義務は、原則受け取った資産の割合で納税します。つまり、多く受け取った相続人が多く納税する必要があります。

例えば、「自宅は長男、現金は妻」と言った分割の場合、自宅を相続した長男が「自宅を売却しなければ相続税の納税資金が確保できない」というような事態にならないように配慮することも重要です。

税理士などの専門家に相談をして、相続税として納税する税金にも配慮した遺言書を作成しましょう。

 

まとめ:「節税」の前に「争族」対策を!

不動産投資で物件を購入して節税対策を図っても、その物件を誰が相続するかで争いが起きる可能性もあります。

まずは、節税対策目的での不動産投資や土地の有効活用の前に、遺産分割を考えることからはじめましょう。

兄弟姉妹は仲が良くても、その配偶者や親戚などから色々意見が出されるケースがあります。

すると、関係が悪化しだし、「相続」が「争族」となってしまうかもしれません。

このようなことを防止するためにも、まずは「遺産分割対策」をしっかりとしておくことが重要なのです。

あなたが築いた財産を円満に次世代へ継承するために、遺産分割を踏まえた財産形成や節税目的での不動産投資を考えましょう。