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相続争いに財産の額は関係なし!遺産トラブル回避の対策とは?

相続争い 対策

相続争いはお金持ちの家だけに起きるわけではありません。場合によっては、遺産が多くなくてもその配分を巡ってトラブルに発展し、相続分が少なくなったり、大切な収入源を失ったりする可能性もあります。なお、この記事では、遺産の額に関係なく相続争いが起きる事例と、遺産トラブルを回避するポイントをご紹介します。ご家族に相続したい資産のある方、相続人になる予定の方は、ご参考にしてみてください。

 

相続争いが起きる確率は火事になる確率よりも高い?

相続争いは、被相続人の死亡により遺産の配分を巡って相続人同士が争うことです。親子や兄弟など身内同士で反目し合う例が多いことから、裁判の時間や弁護士費用などのお金が必要になるばかりでなく、家庭や親戚関係が修復できないほど破綻してしまうケースもあります。

特に遺産が不動産等の場合、登記簿も亡くなった被相続人の名義のままとなり、正当な権利者が表示されなくなってしまいます。そのまま数十年経過すれば孫の代となり、相続人が増えて収集がつかなくなる危険性もあるので、遺産相続トラブルは極力回避しておく必要があります。

 

相続争いは遺産が少なくても起きる

相続争いは、遺産が多い・少ないに関係なく発生します。司法統計によると、2017年度に家庭裁判所に提起された遺産分割調停の件数と構成割合では、相続財産1,000万円以下が2,451件で32.3%、相続財産1,000万円超5,000万円以下が3,285件で43.2%、これを合計すると、相続財産5,000万円以下が5,736件で75.5%となっています。

 

遺産分割調停の件数と構成割合

相続財産価格 調停件数 構成割合
1,000万円以下 2,451件 32.3%
1,000万円超〜5,000万円以下 3,285件 43.2%
5,000万円超 1,860件 24.5%
合計 7,596件 100%

資料出所:2017年度司法統計

上記の統計調査の通り、相続トラブルが発生したもののうち、相続財産5,000万円以下が全体の4分の3以上を占めていることがわかります。相続財産額1,000万円以下の一般的な家庭でも、相続争いが起きる可能性は十分にあるわけです。

 

相続争いが起きる確率は?

同様に、最高裁判所が発表している司法統計によると相続時のトラブルは増加傾向にあります。1997年時点で約10,000件だった遺産分割事件(調停・審判件数)が2017年には約16,000件にまで増加しています。

一方で、年間お亡くなりになった方は約130万人なので、相続発生件数(130件)の内、約1%以上の確率で争いが起きると推測できます。

また、調停まで発展していない件数を含めると、もっと多くの件数で相続手続きが順調に進んでいない可能性があります

 

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相続争いのパターンとは

遺産が多くなくても相続争いが増えている最大の理由は、相続人の意識の変化にあると指摘されています。以前の日本は家制度により長男が両親と同居して家や家業を継ぎ、両親の面倒をみるという風習がありました。家や両親を守る長男が全財産を相続することが当然と考えられ、他の相続人も異議を申し立てる者は多くありませんでした。

しかし、戦後になり家制度が廃止され、長男も含めた相続人の権利・義務がすべて平等になったことから、自分の権利を主張する相続人が増えています。そのため、相続人同士の主張が衝突し、相続争いに発展しやすくなったという経緯があります。

実際、相続争いに発展しやすいパターンは以下の通りです。

 

遺産が不動産である

遺産の中に不動産があるとトラブルが起きやすくなります。最もトラブルに発展しやすいのは、遺産が不動産だけしかないパターンです。

遺産が現金や有価証券の場合は、金額的にきっちりと分けることができます。しかし、土地が複数あればそれぞれ面積や評価額が異なります。また、遺産が狭小地だけの場合は、それを分けてしまったら住宅も建てられなくなります。

さらに、家屋は相続人の誰かが住んでいる可能性があり、物理的に分けること自体も困難です。

このように、不動産は相続人同士で納得できる形に配分することが難しいため、トラブルになりやすい資産と言われています。

 

親の面倒をみた相続人がいる

親の面倒をみた相続人とその他の相続人で、相続割合の主張に隔たりがあり解決できないパターンです。

親の介護や老後の面倒をみた相続人は、自分が遺産を多く貰って当然と考えています。相続人が被相続人の力になったことで遺産の取得を増やすことを「寄与分」といいますが、この寄与分が認められるためには、相続人の貢献により被相続人の財産が増えた、あるいは、財産の減少を食い止めたという客観的な裏付けが必要となります。

客観的な証拠もなく、「面倒をみたから遺産を多く貰いたい」と口頭でいっても法的には認められ難いのが実情です。

 

前妻の子や認知した子がいる

前妻の子や認知した子がいる場合も、トラブルが起きやすいといえます。前妻の子や認知した子は法定相続人なので相続権もありますが、多くの場合、その他の相続人とは交流がなく、被相続人の死後に突然現れるケースもあります。

その他の法定相続人からみれば、被相続人の面倒をみたわけでも、その財産増加や維持に貢献したわけでもないため、遺産分割トラブルに発展しやすくなります。

 

内縁の配偶者がいる

被相続人に内縁の配偶者がいる場合です。内縁の配偶者は相続権がありませんが、居住している住宅が被相続人の名義のため、それを相続した法定相続人から立ち退きを要求されてトラブルになるケースがあります。

 

生前贈与を受けた相続人がいる

被相続人が存命中に生前贈与を受けた相続人がいると、他の相続人から遺産配分で加味するよう指摘を受けることがあります。生前贈与を受けた相続人が認めればよいですが、「親の面倒をみた正当な対価だ」などと主張して遺産争いになることがあります。

 

遺産を消費した相続人がいる

被相続人と同居していた相続人が、被相続人の財産を消費(浪費)してしまうことがあります。その他の相続人は、消費した財産分は同居していた相続人の相続分から減らすことを主張しますが、同居していた相続人は、親の面倒をみるために使ったと言い張るパターンも少なくありません。

家計簿などを残していればよいのですが、記録などがない場合は解決が困難です。

 

相続争いの事例とトラブル回避のポイント

それでは、相続トラブルで起きやすい具体的なケースを例に、遺産争いを回避するポイントをご紹介します。

 

【事例】

父親が死亡し、母親・長男・長女・次男の4人が法定相続人になったケースです。家は商売を営んでおり、長男は家業を継ぐために、以前から父親を手伝いながら実家で暮らしていましたが、長女と次男は結婚して独立しています。

遺産は自宅兼店舗およびその敷地のほか、目ぼしいものはありません。また、父親の遺言はなく、長男がそのまま商売を継いで母親の面倒をみる代わりに、全財産を相続することで母親、長女、次男の了解を得ました(口頭の同意)。

しかし、後日になって次男がこの内容に異議を唱え始め、勝手に法定相続分どおりの共有割合で相続登記をしてしまいました(法定相続分どおりの共有割合であれば、どの法定相続人でも単独で相続登記が可能)。

このようなトラブルを発生させないための対策、また、トラブルが起きてからの対策はどうすればよいのでしょうか。

 

対策① 遺言書を遺しておく

最も効果的な対策は、父親が遺言書を遺しておくことです。この場合、実家の商売を継ぎ、母親の面倒をみる長男に多くの財産を相続させる内容になると推測できます(他の相続人には遺留分あり)。

しかし、遺言は亡くなった父親の遺志であり、各相続人の相続分も明確に記載されているはずのため、異議を唱える者もなく事態は平穏に治まったでしょう(相続人全員の同意のもとに、遺言内容と異なる相続割合を決めることは可能です)。

遺言書は、自分自身で作成する自筆証書遺言と自分の遺志を公証人に記述してもらう公正証書遺言がありますが、後日要件不足のために無効とされないためにも、公正証書遺言を作成しておくと間違いがないでしょう。

 

対策② 遺産分割協議を行う

事例では、父親の死後に遺産分割協議を行いましたが、口頭での話し合いのみで正式な遺産分割協議書を作成していなかったことから、後日トラブルが発生してしまいました。正式な遺産分割協議書は、遺産分割協議の内容を法的に証明する書類で、法定相続人全員が署名・捺印する必要があります。

上記ケースでは長男がすべての遺産を相続すると話し合われた時点で、遺産分割協議書を作成し、不動産の登記名義を長男に変えておくことが重要です。

 

対策③ トラブルが発生してからの対策方法

事例では、次男が勝手に法定相続分どおりの共有割合で相続登記をしてしまいました。しかし、長男は家業を継ぐために、以前から父親の仕事を手伝ってきた経緯があるはずです。この場合には、長男は家庭裁判所に対し、寄与分の額を定める審判の申し立てをすることができます

また、次男が自己の共有持分を処分したり、担保に入れたりする可能性もあります。そこで、次男が処分や担保設定などの行為ができないよう、仮処分の申し立ても同時に行う必要があります。

なお、この寄与分は、これから将来的に家業を継ぎながら母親の面倒をみるという理由では認められず、あくまで、遺産の増加・維持に寄与した過去の実績に基づくものです。長男が、これまで父親の家業を手伝ったことにより遺産の増加・維持に貢献したことを客観的に証明し、はじめて寄与分として認定されることになります。

一方で、争いが発生してからでは法的な手続きが必要となり、なかなか大変です。裁判等の時間も弁護士費用などのお金も必要となってしまいます。やはり、争いが起きる前の対策が大切です。

 

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相続対策

相続対策と言えば、真っ先に思い浮かぶのが相続税の節税です。しかし、相続対策とは相続税を少なくすることだけではありません。次の3つが大きな柱となります。

 

①「争いが起きないようにするための遺産分割対策」

②「無事に納税できるようにするための納税対策」

③「少しでも多くの財産を子や孫へ資産継承するための節税対策」

 

この3本柱の対策をバランスよく講じることが大切です。

 

まとめ

相続争いは、富裕層だけでなく一般的な家庭でも十分に起こり得ます。特に実家を相続するケースでは、両親が亡くなったあとに分割方法で揉めるといったパターンが多いため、公正証書遺言を作成するなどの対策をすることが重要になります。

遺産トラブルは家族間や親族間に修復しようのない亀裂を生じさせる要因にもなるので、場合によっては専門家に相談するなどして冷静に解決するよう努めましょう。

 

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