個人の不動産投資家が直面する問題は法人化で解決|法人化のメリット5つ
不動産投資で成功している個人投資家の中には税金対策や家族への相続で悩んでいる方も少なくありません。
個人の場合、所得が高くなるほど税率も高くなる超過累進税率が採用されているため、所得が4,000万円を超えると税率は45%に達します。
一方、法人の場合、課税所得が年800万円を超えても税率は23.2%で一定です。
今回は個人の不動産投資化の悩みを解決する法人化のメリットをご紹介します。
不動産投資事業を法人化することで効果的な節税・相続対策をしましょう。
法人化で所得税を節税
法人化により個人事業主の所得税は大きく抑えることができます。法人の税率は「一定税率」、個人は「累進税率」が採用されているため、高額所得者ほど法人化すると納税額が少なくなる仕組みです。
法人は一定税率で節税に有利
個人所得の税率は課税所得金額に応じて、下の表のようになります。
課税所得金額 | 税率 |
195万円以下 | 5% |
195万円を超え 330万円以下 | 10% |
330万円を超え 695万円以下 | 20% |
695万円を超え 900万円以下 | 23% |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% |
1,800万円を超え 4,000万円以下 | 40% |
4,000万円超 | 45% |
一方、法人所得の税率はこの通り。
普通法人の区分 | 税率 | |
中小法人以外 | 23.2%※1 | |
中小法人※3 | 所得金額のうち
年800万以下の部分 |
19%
(15%※2) |
所得金額のうち
年800万超の部分 |
23.2%※1 |
※1平成30年4月1日以後に開始する事業年度について適用。
※2カッコ書きは、平成31年3月31日までの間に開始する事業年度について適用。
※3中小法人とは、各事業年度終了の時において資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるもの、又は資本もしくは出資を有しないもの。
例えば、年間収入から経費を差し引いた課税所得が5,000万円の個人と、法人の場合の納税額は次のような違いが出ます。
個人の場合 | 法人の場合 | |
所得税額 | 約1,724万円※1 | 約1,046万円※2 |
※1 住民税及び事業税等を除く
※2 中小企業が個人に役員報酬900万円を支払う場合の法人と経営者の所得税の合計
この通り、法人化すると約678万円の節税が可能です。
所得分散でさらに節税
妻や子どもを役員にして役員報酬を支払うことで、節税効果はさらに高くなります。
- 上記の例で家族2名を役員とした場合
個人の場合 | 法人の場合 | |
所得税額 | 約1,724万円 | 約915万円※2 |
法人化により約809万円の節税が可能となり、さらに役員1名(経営者)の場合よりも約131万円の節税となります。
法人化による退職金で節税
個人事業主には退職金制度が該当しませんが(共済制度を除く)、法人では経営者も退職金が得られるうえ、退職所得控除(勤続年数に応じた金額を給付額から控除)が利用でき、退職金は税金面で有利となります。
例えば個人が5,000万円の報酬を受け取る場合、税金は約1,770万円です。
一方、勤続30年の法人経営者の退職所得控除額は、800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円です。
この人が5,000万円の退職金を受け取る場合、課税対象額は
(5,000万円-1,500万円)×1/2=1,750万円
となり、所得税額は約424万円です(復興特別所得税を除く)。
つまり、法人化すると1,770万円-424万円=約1346万円の節税効果があることがわかります。
法人化による生命保険の有効活用
法人の場合、生命保険料が損金の対象となるケースがあり、節税しつつ将来の大きな支出(経営者の退職金、大規模修繕費用、相続税の資金)に備えることができます。
例えば、10年後に大規模修繕で700万円の費用を予定している場合、10年後に700万円の解約返戻金が得られる生命保険に加入することで、その費用の準備ができます。
毎年の保険料は損金となるため毎年の節税にも有効的です。
法人化で赤字の繰越が7年間可能
青色申告の個人が可能な赤字の繰越は3年ですが法人は7年です。
例えば、中古の1棟アパートでは、築年数が多いと減価償却期間は短く、年間の減価償却費が多くなり一定期間赤字になることも予想されます。その場合、減価償却期間が終了すれば、会計上は大幅な黒字となり多額の税金支出が発生することもあります。
しかし、法人では赤字を最大7年間繰り越せるため、個人よりも4年も長く税金の支出が抑えることができます。
法人化による相続面での節税効果
不動産などの財産が多い場合、揉めやすい相続問題を法人化で解消することができます。
相続の容易化
1棟マンション、複数の区分物件などを家族が相続する場合、現物を上手く分割できないことがあります。また、遺産分割協議を行う場合、複雑な代償分割などの手続が必要になり、時間や費用などが少なからずかかります。
しかし、法人の資産にすることで、不動産ではなく法人の株式で相続することになり簡単に済ませることができます。
相続前の財産移転
家族を法人の役員として報酬を支払っておくことで、相続財産を相続前から移転させることが可能です。さらに相続が発生した場合の準備資金とすることもできます。
例えば、1棟アパートなどは建物を法人の所有物にしておき、相続の発生後に土地を法人に売却にすれば、土地の売却代金を相続税の支払いに充てることができます。
ただし、次に述べる「土地の相続税評価額」による節税効果を考慮する必要があります。
土地の相続税評価額の減額
法人で土地を所有すると個人よりも相続税評価額は軽減されます。
個人所有の土地の相続では、土地の相続税は相続税評価額に基づき算定されます。例えば、個人が10年前に2,000万円で購入した土地の時価が現在6,000万円であれば相続税評価額は6,000万円です。
一方、法人が購入した土地は時価が6,000万円で評価されても、相続対象は法人の株式になります。法人の含み益を有する土地は法人税等を考慮して評価され、その上で法人の株式は評価されるわけです。
例)経営者が法人の株式(2,000万円分)を100%保有していた場合
株式の評価では
(6,000万円-2,000万円)×法人税率(33%等)=1,320万円
と控除され評価されます。
つまり、同じ土地でも法人化により相続税評価額は1,320万円も減額できることになります。
よって法人化による土地の評価額は
6,000万円-1,320万円=4680万円となります。
まとめ
不動産投資を行うことで、あなた自身の所得や資産規模が拡大します。すると、所得税の納税額も大きくなり、相続対策も考える必要性が生じます。
これらの悩みや課題を解決するための方法として「法人化」があります。
特に、所得税の節税という視点では、高額所得者ほど法人化によるメリットを享受できます。
しかし、法人化を行うことは様々な諸経費が必要となるため、一般的なサラリーマンがアパート1棟程度所有するのであれば、個人のままで不動産投資を行う方が有利な場合があります。
あなた自身の今後の資産形成の在り方や、めざす不動産投資の目的に応じて法人化が有効なのかどうかシミュレーションを行い、税理士などの専門家を交えて検討してみましょう。