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アパート経営とマンション経営の違いを解説

アパート経営 マンション経営 違い

賃貸経営には、主にアパート経営とマンション経営の2種類があります。どちらも同じ集合住宅ですが、建物の構造自体や不動産経営という面から見ると実に多くの違いがあるのをご存知でしょうか。特に賃貸経営では、「どちらの収入のほうが多いのか」「資産価値が高いのは?」「節税対策として有効なのは?」などについて気になる方も多いでしょう。

そこで今回の記事では、アパート経営とマンション経営のどちらを選ぶかで悩んでいる人のために、両者の建てやすさ・耐用年数・収入・売りやすさなどの違いについて詳しくご紹介するので、参考にしてみてください。

 

そもそもアパートとマンションの区分は?

結論から言うと、「アパート」と「マンション」の区分については法律で明確に定められた基準がありません。「アパート」「マンション」は呼び方の一つであって、建物の「構造」により不動産会社などが判断して呼び方が変わっています。

例えば、アパートは「木造や軽量鉄骨造」、マンションは「鉄筋コンクリート造や重量鉄骨造などの堅固な造り」の建物のことを指します。この構造体によって様々な違いがあるのです。

 

アパート・マンションの主な違い

アパートもマンションも同じ集合住宅ですが、さまざまな点で違いが見られます。例えばマンションの階数は数十階という高層ビルがあるのに対して、アパートにはそのような建物はありません。

また、マンションにはエレベーターが設置できますが、アパートにはありません。国土交通省が発表した「長寿社会対応住宅設計指針」によると、エレベーターの設置目安は6階以上の建物で、3階から5階建ての建物にもできる限り設置することとしています。

ほとんどのアパートは、通常、「2階建て」もしくは「3階建て」です。そのため建築コストを下げる意味でもエレベーターが設置されていません。マンションの場合も4階建てくらいまではエレベーターが設置されていないものがありますが、5階以上の階数であれば設置されるケースが多くなります。

一般的にアパートよりもマンションのほうが防音性や断熱性は高くなります。構造上の違いは居住性にも違いが生じ、居住性の違いは同じ専有面積であっても家賃単価にもあらわれます。同じ広さであっても、アパートよりもマンションのほうが高い家賃設定にできるのが特徴です。

 

アパートは1棟単位、マンションは1室から購入可能

アパート経営は、基本的に1棟単位で購入あるいは建築して運用します。一方、マンション経営は1棟すべてを購入あるいは建築するほか、区分所有という形で1室のみを購入することが可能です。

そのため、賃貸経営を検討している人は予算に応じてどちらを選ぶかが決まるでしょう。用意する頭金や、購入のために組んだローン返済におけるリスクなど、自身にどの程度の余裕があるのかを考慮した上でアパートとマンションのどちらを選ぶのかを決めることになります。

 

アパート経営とマンション経営の違い

アパート経営とマンション経営の違いについて、建てやすさや耐用年数などの7つのポイントに分けて見ていきましょう。

 

建てやすさの違い

土地を所有しているか、あるいは土地から購入する場合、アパートとマンションのどちらを建築するのかを選ぶことになります。その際のチェックポイントは、「建物の建てやすさ」です。

例えば、建物の高さ制限などが決められている「第一種低層住居専用地域」の場合、アパートを建てるのは問題ありませんが、マンションの場合には3階までの高さに制限されます。4階建て以上のマンションを建てるのであれば、第一種中高層住居専用地域あるいは第ニ種中高層住居専用地域などでなければなりません。

アパートの場合、マンションよりも高さ制限が少ないので建てやすいと言えます。特に高層マンションは、建築できる用途地域が制限されるため、事前によく確認する必要があります。

 

希少性の違い

不動産の賃貸経営で収益性につながる大事な要素は「希少性」です。希少性とは「需要に対していかに供給が少ないか」を表す指標です。

アパートとマンションの需要は、利用者の考えによっても違います。例えば、新型コロナウィルスの影響を受けて少しでも安い家賃のアパートに需要が集まることも、あるいは地震に備えて耐久性の高いマンションに需要が集まることもあります。

マンションとアパートのどちらの入居者募集のほうが多いのか、エリアによってその結果は異なります。例えば、東急住宅リース株式会社が公表した調査結果によると、アパートおよびマンションの募集戸数割合の全国平均は、以下の通りです。

東京都 京都府 全国平均
マンション 65.4% 81.3% 54.7%
アパート 32.3% 16.2% 41.9%
戸建て 2.3% 2.6% 3.4%

東京都の場合、それぞれの割合は65.4%、32.3%、2.3%です。マンション比率が最も高い地域は京都府でそれぞれ81.3%、16.2%、2.6%となっています。

一方、東北地方ではその割合が逆転しています。例えば、福島県は14.3%、83.3%、2.5%、青森県では9.0%、87.8%、3.2%となっています。

賃貸経営をする地域によっても希少性は異なるので、エリアごとに募集戸数割合を確認することは、賃貸の付きやすい建物を判断する際の参考にもなります。

 

耐用年数の違い

アパートとマンションは構造上の違いにより、耐用年数にも大きな差があります。例えば、鉄筋コンクリート造のマンションの耐用年数は47年、重量鉄骨造の場合には34年となります。

一方、アパートの耐用年数は、木造22年、軽量鉄骨プレハブ造(骨格材肉厚3mm以下)19年、軽量鉄骨プレハブ造(骨格材肉厚3mm超4mm以下)27年となります。

耐用年数を超えた建物の評価額はゼロとなるため、銀行からの融資が下りにくくなる点に注意しましょう。また耐用年数は節税効果の長さにつながります。新築で購入する場合、耐用年数が短いほど節税効果が高いなどのメリットがあるため、購入する時も売却する時にもチェックしたいポイントです。

 

建築費用の違い

物件の建築費用はその構造により単価が変わります。耐用年数が長い構造ほど建築費用の単価は高くなるので、アパートよりもマンションのほうが建築費用は高くなるわけです。

もちろん耐用年数が長いほど有利な点もあるので、一概に建築費用が安いほうが良いとは言えません。例えば、予算の関係で建築費用を可能な限り抑えたいなどの事情があれば、マンションよりもアパートを選ぶほうがいいでしょう。

 

収入の違い

アパートとマンションの収入の違いは、利回りで考えたほうがよいでしょう。単純に家賃単価だけを見れば、アパートよりもマンションのほうが高くなります。

しかし、購入費用やローン返済、メンテナンス費用などを差し引いた実質的な利回りを比べた時、「資産運用としてどちらが魅力的か」が決まります。

さらに、運用しているアパートやマンションの売却を視野に入れる場合も、利回りの考え方は変わります。売却によってそれまで支払ったローンの元金部分が残ること、購入費用と売却代金の差額などにより、手元に残るお金は変わってくるからです。

後述する通り、売却しやすいか否かの流動性の違いも利回りに影響するため、注意が必要です。

 

空室リスクの違い

アパートとマンションを賃貸経営する際に、避けられないのが空室リスクです。アパートには複数の部屋があるので、一部が空室となっても収入が途絶えるわけではありません。

一方、区分所有のマンションを一つだけ運用しているような場合、賃借人が付かなければ収入はゼロです。この点から言えば、複数の部屋があるアパートのほうが、区分所有のマンションよりも空室リスクは小さいと言えるでしょう。

 

流動性の違い

運用しているアパートあるいはマンションを売却したい時、買い手を探しやすいかどうかは、物件の流動性によって異なります。物件の流動性は、供給数に対して需要がどの程度あるのかによって決まります。

マンションの場合、区分所有の1室であれば1棟と比べて価格が安い点で多くの需要が見込めます。さらに賃貸物件に限定せず、居住用としても売却できるので買い手を探しやすいと言えるでしょう。

一方、アパートの場合、基本的に賃貸物件として売却することになります。売却先は資産運用を検討する人に限定される点で、マンションよりも流動性は低くなります。ただし、アパートは解体すれば更地として売却できます。この場合、土地を探す人も対象となるので、流動性は高まると考えてよいでしょう。

 

アパート経営が向いている人

アパート経営に向いているのは、すでに土地を保有している人、あるいは土地を保有したい人です。耐用年数はマンションに比べて短いものの、地価に裏付けされた価値を持つ土地を所有するという強みがあります。

なお、耐用年数の短さはデメリットばかりではありません。短期間でより多くの減価償却費を確定申告時に計上できるため、節税効果も見込めます。アパート経営は節税を検討している人にも向いています。

 

マンション経営が向いている人

区分所有のマンションであれば、購入時の資金的な負担も少ないため、不動産による資産運用を初めて行う人にも向いています。あるいは複数の場所でマンションを保有し、空室リスクを分散したいと考える人にも向いています。

また、耐用年数が長いことから、長期にわたり収益を生み出してくれるので、長いスパンで賃貸運用を考える人にもマンション経営は向いています。

一方、1棟マンションは、収入金額も大きく資産価値も高いのが魅力ですが、投資資金が多額になるため、購入できる人は限られるでしょう。

 

まとめ

アパート経営とマンション経営には様々な違いがありますが、運用目的や物件の場所によって賃貸人の需要は変わってくるので、一概にどちらがおすすめとは言えません。両者は、建築費用や資産価値、収益性なども大きく異なるので、それぞれの特徴をしっかりと理解したうえで、どちらの経営に取り組むのかを決めることがとても大切です。