Media
メディア

少子高齢化が不動産投資に及ぼす影響とは|リスクへの対応を考える

少子高齢化 リスク 対応

今後、日本は少子高齢化に伴う人口減少により、様々な問題が発生することが予測されています。

これまでの日本は、金融緩和・低金利などの影響による不動産投資ブームをはじめ、相続税改正の影響もあり、賃貸住宅の供給が盛んに行われてきました。このような状況による空室問題が取り沙汰される中で、今後の不動産投資は大丈夫なのか?と思われる方も少なくありません。

しかし、本当に不動産投資はやめた方が良いのでしょうか?

結論から言うと、少子高齢化・人口減少の影響は、すべての投資に影響があります。人口減少に伴う消費や生産力などの低下により、産業などの活力が衰退し、さらには行政機能の低下や企業の海外流出などが考えられます。

そのため、不動産投資だけに深刻な影響があるとは考えにくいでしょう。不動産投資の本質を理解し、物件の購入から賃貸経営までをしっかりとハンドリングし、リスク対応することが大切です。

今回は、少子高齢化に伴う人口減少が不動産投資にどんな影響を及ぼし、リスクへの対応をどのようにすべきかを考えてみます。

 

少子高齢化・人口減少により想定される影響やリスク

少子高齢化・人口減少により想定される影響やリスクは、「人口が減ることにより住宅が余り、空室が増えること」です。

もう少し細かく考えてみると、以下のことが想定できます。

 

  • 高齢化に伴い、特に若い世代向けの住宅が余る
  • 若い単身者は利便性を重視する傾向があるため、郊外の1ルームは苦戦
  • 1世帯当たりの人口も減少するため、ファミリー向けの賃貸物件も余る
  • 空き家が増えることにより、中古の戸建て住宅が安く流通し、ファミリー向けの賃貸物件と競合
  • 賃貸需要が減り、競争が激しくなることで、家賃や地価の下落

 

 

どの場所でも平均的に人口が減る訳ではない

「日本の人口は各地域で一律に減少する訳ではない」ことを理解する必要があります。

少子高齢化・人口減少の現状を「総務省統計局の人口推計の結果概要」から見てみると、日本の人口減少は進んでいるのは明らかですが、増加している都道府県もあります。

平成29年4月14日公表の「人口推計(平成28年10月1日現在)‐全国:年齢(各歳),男女別人口 ・ 都道府県:年齢(5歳階級),男女別人口‐」によれば、人口増加をしているのは、人口増減率順に、東京・沖縄・埼玉・愛知・千葉・神奈川・福岡の7都県です。この7都県は人口移動による社会増加となっており、東京都・愛知県及び沖縄県は出生数が死亡数を上回る自然増加にもなっています。

(参考:総務省統計局) www.stat.go.jp/data/jinsui/2016np/index.htm

 

また、平成30年1月29日公表の「住民基本台帳人口移動報告 平成29年(2017年)結果」によると、転入者が転出者を上回る「転入超過」は、順に東京・千葉・埼玉・神奈川・福岡・愛知・大阪の7都府県です。2018年1月30日付の日本経済新聞によれば、東京圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)は22年連続で転入超過が続いており、東京圏への人口集中が一段と進んでいるとしています。

(参考:総務省統計局) www.stat.go.jp/data/idou/2017np/kihon/youyaku/index.htm

 

 

人口減少が少ない都市で投資をするべきか?

これらの都府県で不動産投資をすれば人口減少のリスクを低減できるかというと、そんなに安易ではありません。

人口が増えている都県内でも、人口が増えている地域、緩やかに人口が減少する地域もあれば、急激に人口減少が進むと予測される地域に分かれます。

人口が増加している地域の物件に不動産投資をすることも一つの選択肢です。しかし、人気のある地域は他の投資家との競争が発生し、価格が高騰・利回り低下が起こっており、物件供給も多いことから空室リスクも高くなります。

このような点も考慮した上で、物件購入のエリアを選定する必要があります。

 

大事なのは人口推移のデータだけではない

物件選びをする際には、ある程度ミクロなレベルで人口推移がどうなっているかを検討することが大切です。

人口推移はその地域での入居者確保のしやすさを見る一つの指標でしかありません。人口が増えればどのような物件も満室になる訳ではないのです。

一方で、人口が減少する地域では絶対に不動産投資が成り立たない訳ではありません。人口が減少する地域の中でも、賃貸物件が供給されていないため、賃貸需要の高い場所もあります。

不動産投資とは、人口が増える・減るの前に、これまで所有していたオーナーとは違った入居者ターゲットの見直しや入居者の方々に選ばれる間取り・住宅設備・内装にリフォーム・リノベーションを行うなどの様々な手段で、他の物件との差別化を考えることの方が重要です。

安易に「人口減少の時代では不動産投資はムリ」と考えるのではなく、適切な地域で適切な物件を選び、他の物件との差別化をすることが成功のポイントです。

 

住宅の数は増えるだけではない?

住宅はどんどん増えるだけではありません。高度成長期に作られた多くの住宅は耐用年数を超えているため、取り壊しの時期を迎えます。大規模団地の取り壊しなどが計画されている地域もあります。

新規に賃貸住宅が供給されなければ、そのエリアの賃貸住宅が減る可能性もあります。

つまり、地域によっては、想定されるほど賃貸住宅の空室が多くならないかもしれません。

 

外国人向けのニーズ

人口減少により労働人口も減少するため、多くの外国人が日本で働く時代が来るかもしれません。すると、外国人が日本に暮らす時代も考えられます。

生活スタイルや文化が異なるため、日本人に人気のないエリアや物件だったものが、外国人ニーズで人気が出る可能性も充分に考えられます。

 

働き方の変革によるニーズ

労働人口の減少については、働き方にも影響を及ぼします。外国人ばかりではなく、健康な高齢者の活躍の場や子育てしながらでも働ける環境も充実するでしょう。

例えば、通勤などに配慮した在宅ワークといった働き方がもっと活発になるかもしれません。

また、IT・ネット社会により無店舗営業も増えるでしょう。

通勤を考慮する必要がなくなるため、駅近だけに人気があるのではなく、自然が豊富、治安が良いなどの住環境が良い地域の入居需要が増える可能性があります。

 

高齢化による高齢者のニーズ

高齢化社会を迎えるにあたり、住まいに対する考え方や在り方も変化するでしょう。

バリアフリー、エレベーター付き、低層階の人気が高まることや、暮らしのサポートやサービスのある住宅が標準化される可能性があります。

子どもたちが独立し、今の住まいが広すぎる場合は、家を売却して賃貸に住みかえるニーズも生まれます。

 

まとめ

日本はこれから少子高齢化・人口減少社会を本格的に迎えます。不動産投資に限らず日本の経済に大きな影響を与えることが予想されます。

不動産投資だけがダメなのではありません。不動産投資を賃貸事業・賃貸経営としてとらえ、リスクが許容できる範囲で行うことが重要です。

大切な立地選びですが、人口減少は、全国一律に人口が減る訳ではありません。地域によっては人口減少が急激に進む訳ではなく、少しずつ状況が変化するのです。不動産投資をするエリアを詳しく見てみると、まだまだ可能性がある地域は存在します。その間、人口減少に備え、将来を見据えた他の物件との差別化を図ることが大切です。

はじめて不動産投資を行うのであれば、既に人口減少が加速している地域は避けるとしても、人口増加や人口減少が少ない地域を選ぶことだけが正解ではありません。もう少し狭い地域での範囲で賃貸ニーズや将来の都市開発などを把握し、立地を選択することが大切です。更に、物件は他の競合物件との差別化を行うことが重要です。

これからの不動産投資は、今までの既成概念にとらわれず、所有しているアパートやマンションをいかに工夫し、新しいアイデアを生み出し、他の物件と差別化できるか?がポイントです。

不動産投資は、金融・税制に影響を受けるとともに、社会経済にも大きく左右されます。人口減少による労働力への影響により、外国人あるいは高齢者・子育て世帯などの女性の活躍が不可欠な時代ともなれば、働き方も変化することで暮らし方のニーズも変化します。また、地方の古民家や築古物件などに安らぎを感じるなど、住まいや暮らしに関する価値観が大きく変化することもあります。

このように、多様化した文化やニーズとともに、働き方も多様化することで、賃貸に暮らすという在り方も、今までとは全く異なる環境になるかもしれません。新たなマーケットが創出される可能性があるのです。

人口がゼロになる訳ではありません。

不動産投資を事業として捉え、しっかりと物件の差別化をすることが重要です。