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仕組みを解説|不動産投資で節税向き物件と向いていない物件の違いとは?

不動産投資 節税 仕組み

「不動産投資をすればサラリーマンでも節税ができる」という話を聞くことがあるかと思います。しかし実際には、どのような物件を購入してもそのような節税効果が得られるわけではありません。不動産投資用の物件には、「節税に向いているもの」と「向いていないもの」があるため、基準となるポイントをしっかりと押さえることが大切です。

そこで今回は、節税に向いている物件と向いていない物件にはどのような違いがあるのか、その仕組みについて説明するので、参考にしてください。

 

不動産投資が節税になる仕組み

不動産投資による節税とは、おもに「所得税」「住民税」の支払う税金を抑えることを意味します。税金を給料から天引きされるサラリーマンでも、不動産投資をすると税金を取り戻せることがあるので、その税金の還付を利用してローン返済に充てたり、あるいは利益に上乗せすることができます。

また、不動産投資は相続税対策にもなります。不動産投資で資産運用をしている間に享受できるものではありませんが、相続人に対して資産を相続する際、不動産は現金よりも相続税評価額が低く見積もられるので、節税につながります。

それでは不動産投資が節税になる仕組みについて、「所得税・住民税」と「相続税」の2パターンに分けて詳しく見ていきましょう。

 

所得税・住民税

例えばサラリーマンの方が不動産を購入し、それを賃借人に貸し出すことで家賃収入を得ると、翌年の2月〜3月付近で確定申告をする必要があります。その際には「不動産所得」として計算しますが、家賃収入を得るために要した必要経費を計上することができます。

そして必要経費を引いた収入は、給与所得などと合算して総所得を算出する仕組みになっています。つまり、不動産所得がプラスであれば、税金は増えるということです。

しかし必要経費が収入よりも多くなれば、不動産所得は赤字となり、給与所得などと合算して総所得を引き下げることができます。すると、すでに天引きされた所得税から多く納税していた分が還付されることになります。

住民税に関しては確定申告が終わってから税額が決定するので、本来支払うべき税額よりも少なくなる形で減税されます。

不動産投資の赤字申告でポイントとなるのが「減価償却費の計上」です。経費については、実際に支払った費用のほかに、「減価償却費」というものを計上できます。減価償却とは、建物の経年劣化による価値減少分を経費として計上できる会計制度です。不動産の建物は「償却資産」となり、定められた年数のあいだは経費として毎年計上することが可能です。

この減価償却費が家賃収入の大きな額となるため、ローン返済の金利部分や固定資産税などと合算すると家賃収入を上回ることがあります。赤字所得となれば損益通算により総所得も下がり、節税につながるというわけです。

 

会社員が不動産投資で節税できる仕組みとは

 

相続税

不動産は現金や株式などの金融商品とは異なり、相続税評価額が時価よりも少なくなるという特徴があります。

不動産は「土地」と「建物」に分けられます。土地の場合、時価ではなく、市街地なら「路線価方式」、それ以外の地域なら「倍率方式」の評価方法によって課税額を再評価するため、課税評価が下がります。

また、建物の場合は固定資産税評価額で評価します。これも時価より低く見積もられるのが通常なので、現金で相続するよりも不動産で相続するほうが支払う税金が安くなるという仕組みです。

なお、相続税の節税効果は、相続する時点で享受できるメリットなので、資産形成を目的とするサラリーマンなどが行う不動産投資においては、すぐにその恩恵を受けられるわけではないことを理解しておきましょう。

 

いまさら聞けない!不動産投資で相続税対策ができる理由とその計算方法

 

節税に向いている物件

不動産投資で節税に向いている不動産は、より多くの減価償却ができる物件です。そしてより多くの減価償却するためには、次の2つの条件を満たす必要があります。

 

①短期間に多くの減価償却費を計上できる

②長期間で減価償却をできる

 

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

木造築古物件

短期間で高い節税効果が得られるという点では、木造の築古物件が向いています。特に譲渡所得率が低くなる5年超で売却する場合、木造築古物件は節税面で有利です。

木造住宅は減価償却の耐用年数が短く(=22年)、その耐用年数を超えた築年数であれば4年で減価償却できます。もちろん木造物件は築年数の経過により、建物価格も下落します。それも含めて4年間という短期間で減価償却できれば、かなりの経費計上が見込めます。

また賃貸需要が多く、家賃利回りが高い木造物件であれば、建物価格の下落率もそれほど大きくないので、多くの減価償却費計上が期待できます。

 

耐用年数の長いマンション

節税に向いているのは木造物件だけではありません。減価償却の耐用年数が長いマンションの場合でも、節税に向いている物件があります。

たとえばタワーマンションの場合、同じ棟内でも階数が違うと売却価格が違います。一般的には階数が高いほど、価格も高くなる傾向があります。

一方、土地分の価格について、専有面積あたりの価格は階数によって違いがありません。つまり、建物価格が大きいほど多くの減価償却費を計上できるので、節税効果も高くなります。

また、階数だけではなく部屋の向きによっても価格は違うので、なるべく南向きを中心に物件を選ぶようにすれば節税面でも有利になります。特に新築マンションの場合、減価償却の耐用年数は47年なので、節税の恩恵を長く受けたい人に向いています。

 

節税に向いていない物件

続いて節税には向いていない物件の条件は次の通りです。

 

①家賃利回りが低すぎる

②建物の価値がほとんどない

 

家賃利回りが低すぎる物件

不動産投資では、家賃収入よりも経費のほうが多い場合、課税所得を引き下げる節税になります。では、家賃利回りが低く、賃貸収入の少ない物件ほど節税効果が高くなるのかというと、そういうわけではありません。

そもそも不動産投資の節税は、ローン返済に充てられる十分な収入を得たうえで、より多くの経費計上ができる物件を選ぶことが条件となります。結果として節税効果により所得税などが還付され、手残りが多くなるようにすることが目的です。一方で家賃利回りが低すぎ、そもそもの賃貸収支が赤字になっているような物件では、給与所得からの現金持ち出し状態になっており、赤字分の所得税相当が還付されていても手残りが増えているとは限らないのです。

また、家賃利回りが低すぎる物件は売却時の評価額も低く算出されます。つまり売却時には譲渡所得がマイナスになる可能性があります。

しかし、家賃利回りが低くても資産価値の高い好立地などの素晴らしい物件を購入するのであれば、別の考え方もできます。例えば、資産価値の高い物件であれば、価格が値下がりするリスクは少なくなり、購入と売却のタイミング次第では値上がり益も期待できます。所得税の還付を受けながら価値の高い資産形成を行うという事業戦略も考えられるため、あなたの投資方針で選択されることをお勧めします。

 

建物の価値がほとんどない築古物件(中古物件)

木造物件は築年数の経過により建物の価値が大きく減少します。投資用物件であれば、利回りが低い場合など、建物価格がほぼゼロとなる場合もあります。建物価格がゼロとなれば、減価償却費も当然発生しないので注意する必要があります。つまり節税対策には、物件価格に対して建物価格の割合が大きい物件を選ぶ必要があるのです。

 

節税目的で物件を選ぶ際の注意点

節税目的で投資用不動産を購入するためには、物件の選び方に注意が必要です。節税効果がどれほど高くなっても、そもそもそれなりの課税所得がなければ十分に税金の還付を受けることができません。

つまり短期間で大きな節税効果が期待できる木造物件を購入できるのは、課税所得の高い人に限られるということです。そこまでの所得がない人であれば、長期間にわたって節税効果を享受できるマンションのほうが向いています。

また購入する物件の築年数によって、節税効果がどれほど続くかが異なります。例えば、築古物件は耐用年数が短いため、減価償却期間が経過すると以前よりも所得税が高額になる場合もあります。転売を前提に投資用不動産を購入するのであれば、年数に応じて物件の築年数を決めることになるため、どのくらいの運用年数で売却するのかを考えておくとよいでしょう。

 

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まとめ

節税に向いている投資用物件の違いは、「どれほど減価償却費を計上できるか」という点にあります。さらに木造物件であれば短期間で多くの節税効果を得ることが可能です。一方、肝心の給与所得金額によっては、その節税効果を十分に享受できない可能性もあります。その点を考慮して、購入前にしっかりと節税シミュレーションを行い、購入すべき投資用不動産を検討するのがおすすめです。