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ブームは終焉し正常化に移行|これからの不動産投資には堅実さが重要

不動産投資 ブーム終焉 堅実

金融緩和やマイナス金利の影響で不動産業向け融資がバブル期を超えるなど、ここ数年は「誰もが」「いくらでも」借りられたような融資姿勢により、多くのサラリーマンも不動産投資を行うことができました。

つまり、本来融資を受けることができなかった方も多額の融資を受けて不動産投資ができてしまったのです。

その過熱気味だった不動産投資ブームが終焉を迎えようとしています。

なぜなら、賃貸住宅の供給過剰による警戒感から金融の引き締め(監視)に加え、シェアハウスのサブリース問題や一部の金融機関による不正融資問題により、融資審査の厳格化、さらには自粛ムードのような状況により、金融機関の融資姿勢が冷え込んことが原因です。

これから不動産投資をはじめようとしても、融資条件が厳しいと感じているのではないでしょうか?場合により、金融機関から融資を断られるケースもあります。その結果、不動産投資をためらう方も少なくありません。

もう不動産投資はできない・すべきではないと、思うかもしれません。
しかし、賃貸住宅の需要がなくなる訳ではありません。
金融機関が不動産投資への融資を行わない訳でもありません。

これからは、「リスクが許容できる範囲」での不動産投資のみ融資が受けられると言い換えることができ、正常な投資環境へ回帰しようとしているのです。このような現状において、どのように不動産投資を考えるべきなのでしょうか。

今回は、数年続いた不動産投資ブームが終焉と言われるようになった背景や現在の不動産市場を分析し、今後の不動産投資のポイントを考えたいと思います。

 

不動産投資ブーム終焉の背景と現在の市況

昨年の住宅投資の動きを見てみます。

国土交通省「建築着工統計調査報告(平成29年)」によると、29年の新設住宅着工戸数は前年比で0.3%減の3年ぶりの減少となりました。

 

不動産投資の勢いは鈍化

減少したのは、「持家」の着工戸数が前年比2.7%減となったことが主な要因ですが、「貸家」は6年連続の増加となったものの前年比0.2%増にとどまっています。

日本はもともと貸家の割合が高く23年を底に増加傾向にありました。

ただ、27年(4.6%増)、28年(10.5%増)に比べて、29年(0.2%増)は増加の勢いが弱まったと見ることができます。

 

全国的に見ると直近3年間の貸家の状況は以下の通りです。

首都圏「7.8%増⇒10.1%増⇒2.2%増」
中部圏「8.7%増⇒9.6%増⇒0.4%増」
近畿圏「3.8%減⇒9.5%増⇒4.0%増」
その他地域「4.0%増⇒11.5%増⇒2.9%減」

 

このように貸家の住宅着工戸数の伸びは全体的に鈍化しています。

また2019年10月には消費増税が決定しています。前回の消費税率引き上げ前(2013年)は駆け込み需要により着工が一時的に増加したものの、引き上げ後には減少に転じました。消費税が10%に引き上げられる今回も不動産投資がさらに冷え込むのではないかと懸念されています。

 

不動産投資ブーム終焉の背景

金融機関の不動産市場に対する融資姿勢も慎重です。

日本銀行の平成30年3月末の「貸出先別貸出金」によると、金融機関の同年1~3月の不動産向け新規貸出は3.46兆円で前年同期比約8.5%の減少となりました。

またアパートローンなどの不動産投資に対する金融機関の融資の審査基準が厳しくなってきており、30年の4月~6月、7月~9月の新規貸出額は前年同期比で微減の状態です。

不動産投資の鈍化は、スルガ銀行の不動産関連の不正融資が発覚したことを受け、金融庁が審査の厳格化を各金融機関に求めたことが一因と考えられています。

現在は金融機関の消極的な融資姿勢が住宅着工戸数等の鈍化を促し、不動産投資ブームの終焉に結び付けられるようになっている訳です。

緩んでいた審査基準が修正され金融機関の融資姿勢が正常化されつつあるため、今後は安易に多額の融資を受けて不動産投資をするのは難しい環境になる可能性があります。

 

今後の不動産投資で気をつけるポイント

不動産投資ブームに陰りが見え始めた中、正しく堅実な不動産投資を行おうと考える方には、正常化した市場はチャンスと捉えることもできます。

「融資が厳しい」とは「あなたの許容できるリスクをシビアに審査している」と考えることが出来ます。つまり、融資の厳しい時代に不動産投資が実現できたならば「安全性が高い不動産投資が実現できた」と言い換えることができるのではないでしょうか?

このような時代に不動産投資のチャンスをつかむためにも、今後の不動産投資で気をつけるべきポイントを考えてみます。

 

融資を受けることができる「属性」であること

「誰もが」「いくらでも」借りられたような時代とは異なり、金融機関の不動産投資向け融資の審査が厳しくなる(正常化される)今後は、希望の条件で融資を引き出すための「属性の改善」が重要です。

属性とは、年収、勤務先・勤続年数、現預金残高(頭金)、担保、所有不動産、相続予定、保証人、借入残高(投資、住宅、車、個人向け等のローン及びクレジットカードなど)、信用状況など借り手の個人的な条件を指します。

 

例えば、

・「年収1000万円以上、世帯1人当たりの収入が400万円以上」

・「勤続年数3年以上」

・「過去に滞納などの信用問題の履歴がない」

・「少なくとも2~3割程度の自己資金が準備できる、土地代相当は自己資金が準備できる」

 

などが融資を受けやすい属性であり、そのように改善すると融資担当者の評価が良くなります。

不動産投資をはじめる際には、しっかりと自己資金を貯金するなど、購入対象の物件に見合うあなた自身の与信力・属性を磨くことが重要です。そして、あなた自身の与信に応じて無理のない規模(金額)の物件を選択することも重要です。

このほか、投資物件は物件の収支と担保力が重視されるため、法定耐用年数の長い物件(築古よりも新築など)で年間収支の良好な物件などを選定すると融資が受けやすいと言えます。

例えば利回りの高い中古アパートでも法定耐用年数を超えた物件などは、今後の修繕予測や賃料下落などのリスクを加味し、返済期間が短く、金利が高くなる可能性もあります。

どんなに利回りの高い物件でも経費等の支出が多く年間収支が悪いと融資が困難になります。

今後は金融機関の審査基準で重視されるあなた自身の属性等を向上させること、無理のない物件規模にすること、評価が高くなる(評価額が下がりにくい)物件を選定することが重要になります。

 

パートナー選び

金融機関は現況の利回りが良くても今後の空室や家賃下落リスクを考慮しますので、融資を受けるためにも賃貸経営の戦略が必要となります。

あなたの不動産投資経験や実績があれば良いのですが、はじめての不動産投資ではパートナーとしてノウハウ・実績のある管理会社の選定も重要です。

不動産投資は賃貸経営のため、しっかりとした不動産事業に関する経営ノウハウが必要です。あなた自身にノウハウがなければ、委託する管理会社のノウハウや実績が必要なのです。

そのためには、物件を売ったら終わりの業者からではなく、購入後も入居者募集や建物管理をしてくれる業者がお勧めする物件を選ぶことも重要です。

 

借入額と借入金利

金融機関が不動産投資の融資に慎重になれば、ここ数年までのようにフルローンでの借入が難しくなります。また、借入金利が上昇する可能性があります。

借入額は投資家の年収、自己資金や借入状況などによって決まります。

年収1000万円以上で自己資金が2~3割以上あり、住宅ローンや車ローンなどその他の借入が少ないといった条件が求められることもあるでしょう。

今後は融資が得られやすいように属性等を向上させてから融資を申し込むことが重要です。業者の提携ローンを利用する場合は、有利な条件で融資が受けられる業者を選ぶことも重要です。このほか借入金利は融資額、融資期間、担保、保証人や投資物件などによって異なってきますが、今後は金利の上昇にも注意すべきです。

日銀の平成29年7月の金融政策決定会合では、長期金利の変動幅に関してプラスマイナス0.1%の倍程度を想定するとし、0.2%程度までの上昇が容認されました。その結果、住宅ローン等の金利が上昇しやすい環境になっています。

借入金利の上昇で支払利息が多くなれば年間収支が悪化し投資の失敗に繋がる恐れもあるため、金利の動向も含めて検討しなければなりません。

 

回避すべき投資物件のエリア

地方の空室物件を再生させて収益をあげるノウハウがあれば別ですが、はじめて不動産投資をするのであれば、人口が減少している地方や空室率の増加が見込まれる物件への投資は回避したほうが良いでしょう。

新設住宅着工戸数の首都圏・中部圏・近畿圏を除く「その他の地域」では、対前年同期比でマイナスに転じており地方での不動産市況の鈍化が鮮明になっています。

また、人口の流入超過となる地域では一定の入居者ニーズが期待できますが、その他の地域では流出のほうが多く、期待しにくい状況です。

平成27年に転出超過していない都道府県は、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、愛知、福岡、沖縄の8つのみでした。【参考:総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」より】

入居者の増加が期待できない地方の物件は、おのずと空室率が高くなり家賃の下落にも繋がるため、収益性の低下が危惧され慎重な検討が求められます。

ただし東京23区内でも空室率が7%台から30%台といった区もあるため、都心だからといってすべての地域が高い入居者ニーズがあるとは限らない点にも注意しましょう。

 

東京都23区内の賃貸用住宅の空室率ランキング

1 江東区 7.4% 9 文京区 13.1% 17 足立区 18.2%
2 世田谷区 8.7% 10 港区 13.9% 18 台東区 18.4%
3 墨田区 9.8% 11 板橋区 14.3% 19 豊島区 18.9%
4 中野区 9.9% 12 渋谷区 14.8% 20 荒川区 20.5%
5 北区 12.1% 13 新宿区 15.0% 21 中央区 27.7%
6 品川区 12.3% 14 練馬区 15.5% 22 目黒区 28.2%
7 江戸川区 12.5% 15 葛飾区 16.9% 23 千代田区 36.5%
8 杉並区 12.9% 16 大田区 17.4%

【参考:LIFULL HOME’S不動産投資「見える賃貸経営」(https://toushi.homes.co.jp/owner/)】

(空室率は総務省統計局「平成20年度住宅・土地統計調査報告」からデータ出典)

 

同一地域でも場所によっては空室率や家賃の下落率にも差があるため、個別に物件の良し悪しを見極めることが重要です。

 

不動産投資の時期と物件価格

当然ですが、投資する物件の価格が収支に見合わないほど高価格であると投資に失敗する可能性が高くなります。また、不動産価格は購入時期によって左右されることから、投資に最適な時期を選ぶことも重要です。おおまかに言えば、不動産投資は収入+物件の売却益が投資額を上回れば成功と言えます。

 

投資額<年間収支×運用年数+物件の売却損益

 

現状、物件価格は高止まりしています。
さらに売れ残りの物件も増加しており、近い将来に物件価格が下落する可能性も出てきました。2019年10月1日の消費税増税後には一時的な需要の減退が予想され、さらに下落する可能性もあります。しかしこの状況をチャンスと捉え、「物件を割安で購入できる時期が近づいている」と考えることもできます。

実際に投資するか否かは今後の不動産市場の動向の予測次第ですが、対象物件の購入価格と購入時期を慎重に見極めましょう。特に、不動産投資ブームで都心をはじめとする人気エリアは価格が上昇したため、下落するリスクも高いと言えるので、都心のような価格が上昇した人気エリアの物件を選ぶ際には注意が必要です。

一方で、不動産価格の変動が少なく賃貸需要があるエリアが存在します。このようなエリアは、それほど大きく価格が変動(下落)するとは限りません。

いつ不動産価格が下がるのか?本当に下がるのか?など不明確な状況を待つことで、優良な物件を購入するタイミングを逃してしまうかもしれません。

「今購入するか?」「5年後購入するか?」を比較すると、5年後金利が上昇していれば不動産価格が値下がりしていても収支(キャッシュフロー)が悪くなってしまうかもしれません。

今物件を購入しておくことで、5年分の収益を確保でき、5年分借り入れ元金も返済されています。つまり、早期に不動産投資を行うことのメリットもあるのです。

現状、まだまだ低金利な時代と言えるため、多少、不動産価格が高い時期でも低金利での資金調達は魅力です。無理なく返済できる範囲(物件規模・価格・自己資金)で、購入できる時に購入することがベストな選択と考えることができます。

 

サブリースの注意点

アパートやマンションへの投資などで管理会社とサブリースの契約を結ぶ場合には十分な注意が必要です。

不動産投資ブームの終焉で「賃貸ニーズも落ち込むのでは?」という不安から、収入確保のために管理会社が一括借り上げしてくれるサブリース契約(家賃保証制度契約)を検討する方がいます。

サブリース契約では一定の家賃収入が保証されるため、投資家にとってデメリットがないシステムに見えます。

しかし中には管理会社側が一方的に有利になる契約を結んでしまう場合もあります。

契約上、30年間一定の賃料が約束されているかのように見える内容でも、突然保証額を下げられたり、一方的に契約解除通告をされるケースもあります。

もちろん建物の老朽化や周辺環境の悪化等により家賃を下げざるを得ない状況も生じますが、協議もなく管理会社から家賃の値下げが言い渡され、要求に応じなければサブリース契約の破棄を求めてくる場合もあります。

サブリース契約は管理会社の貴重な収益源であり、所有者が損をしても管理会社は損をしない仕組みになっている契約も少なくありません。

また、一般的に入居者からの敷金、礼金や更新料は所有者が得られないケースが多い点も留意しておきましょう。

 

まとめ

金融機関の不正融資を発端に不動産投資ブームは終焉を迎えつつあり、投資物件の着工件数の鈍化など不動産市場では地方を中心に陰りが見えています。

平成30年7~9月の首都圏のマンション価格では3カ月連続での下落(前年同月比)し、高止まりしていた物件価格にも変化が現れ始めました(株式会社不動産経済研究所「首都圏マンション市場動向」より)。

一方、首都圏の不動産市場は、オリンピック需要による都市再開発計画も多く、30年9月のマンションの発売戸数も前年同月比で増加するなどポジティブな要素も見られます。

誰もが安易に融資を受けることができた時代は、誰もが物件を買えた時代とも言えます。すると、物件購入希望者も多くなり、気に入った物件の購入を検討しているうちに他の方が買ってしまう(売れてしまう)状況も見受けられました。

ところが、正常化した不動産市場のタイミングでは、誰もが物件を買える訳ではありませんので、あなた自身の目的にあった物件選びをじっくりと行うことができると言えます。

このように、不動産投資ブームが終焉することにより正常化した市場での投資環境は、堅実に適正な不動産投資を行おうと考えている方には、有利な状況と言えるのではないでしょうか?

不動産投資は「リスクが許容できているのか?」という点が重要です。

リスクが許容できる範囲の不動産投資を常に考えておくことが、どんな時代においても失敗しない不動産投資を実現するための重要なポイントです。