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サブリース契約のトラブル回避|錯覚と注意すべきポイント

サブリース契約

アパートやマンション経営において、建物を管理する方法の一つに「サブリース」または「一括借り上げ」と言われる仕組みがあります。

この仕組みは、オーナーが建物を管理会社(サブリース会社)に一棟まるごと一括で貸すことで、建物管理や賃貸運営を一括でお任せし、毎月一定の賃料を受け取る仕組みです。

つまり、家賃保証制度のことです。

保証される賃料は、一般的に満室時賃料の約80〜90%くらいとなりますが、空室があっても一定の賃料が保証されているため、安定収入の確保と建物管理を一切お任せできるという点では有効な仕組みです。

寮や社宅と異なり、サブリース会社は入居者へ部屋を転貸し、入居者より受領する賃料と、オーナーへ支払う賃料との差がサブリース会社の利益となるビジネスです。

しかし、管理会社と建物オーナーの間でトラブルが発生している事例もあります。

例えば、

「賃料が10年変わらない契約でアパートを建てたはずなのに、6年後に減額されたとして、愛知県の男性がある大手業者を訴え、同様のトラブルで全国100人以上のオーナーが一斉提訴を検討していると、平成29年2月に報道されたサブリース訴訟問題。」

なぜ、このようなサブリースに関するトラブルが起こったのでしょうか。今回は、トラブルの背景と今後のトラブルを回避するポイントをご紹介します。

 

サブリースのメリット

通常、アパート・マンション経営を行う場合、空室や家賃滞納が発生すれば、オーナーに家賃収入が入りません。

しかし、サブリースを利用すれば、たとえ空室があったとしても、決められた賃料が支払われるため、空室に慌てる必要がありません。空室の有無にかかわらず賃料が保証されていることがサブリースの最大のメリットと言えます。

 

サブリースの錯覚|営業トークに注意

賃貸経営を行ったことがない方でも、空室による収入減がなく、建物管理も一切管理会社にお任せできることもあり、アパート・マンション経営を行う方が増えたのです。

金融緩和・マイナス金利の影響もあり、特に地方で農業を営む方々は、高齢化により体力的にも農作業がきつくなり、農業の跡継ぎもいないため、相続対策や土地の有効活用としてアパート・マンション建設が盛んに行われました。

特に、ハウスメーカー系をはじめとする賃貸アパート・マンションメーカーは、積極的な営業活動により、最近は各社軒並み好調な建設受注高を推移していました。

相続対策でのアパート・マンションを建設しても、「一括借り上げによる家賃保証で空室が出ても心配ないですよ。」という営業トークだったと推測できます。

業者の建築受注のために、入居者ニーズのないエリアでのアパート・マンション供給をしている可能性があります。建築利益を確保するため、高い家賃設定での趣味レーションで建築の提案をしている可能性もあります。

ここに大きな落とし穴があります。

長期的な賃貸経営を支える入居者募集という点が、現実的ではない提案になっている可能性があるのです。管理会社は、オーナーからアパートやマンションを一括で借り上げ入居者に転貸し、オーナーに毎月一定の賃料を支払います。

しかし、家賃の下落や空室が多い建物であれば、管理会社は入居者からの家賃収入よりもオーナーへ支払う賃料の方が大きくなり、会社の利益どころか損失になります。そのような状態を管理会社が続けるわけがありません。供給過剰による空室や家賃下落が発生し、サブリース問題に発展するのです。

一定期間サブリースにより家賃収入の保証をしてもらっていると思っていたが、サブリース賃料を値下げされるというトラブルが発生しています。

一般的なサブリースの契約書には、2年ごとに家賃を見直すというような条項が記載されています。30年間サブリース(または一括借り上げ)しますという意味は、30年という期間を約束しただけで、賃料は見直すということです。

新築当時はまだしも、家賃の下落や空室の多い建物は、建物完成から2年後にサブリース賃料の減額という事態が起こっています。つまり、賃料の額までは保証されていないサブリース契約を締結しているのです。

しかし、なぜ家賃の額を保証していない契約を締結しているにもかかわらず、トラブルが起きるのでしょうか?

 

不十分な説明でのサブリース契約

実は、サブリース契約の内容説明が不十分だったり、虚偽の説明をして契約を締結するなど、悪質な営業トークにより、トラブルに発展して社会問題になっているケースがあります。

契約上、当初の設定賃料は定期的に見直され、オーナーが受け取る賃料も減額できることになっているにも関わらず、営業段階や契約時にこの説明を十分に行われていないのです。

場合によっては、契約期間内は家賃額も保証されているような錯覚や誤解を与える営業トークさえあります。

不動産を売買する場合、宅地建物取引業法(宅建業法)により、不動産会社は宅地建物取引士による重要事項説明が義務付けられています。

しかし、サブリースの場合は「一括借り上げ」という賃貸借契約のため、宅建業法による重要事項の説明義務が対象外のため、明確な説明責任がありませんでした。

その結果、建築受注を目的とする営業担当者は、「アパートやマンションを建ててもサブリースによる家賃保証があるから借り入れ返済も安心です。」というような錯覚をオーナーに与える営業トークを行っている可能性があります。

彼らは建築受注が目的の営業ですから、入居者募集や建物管理は関係ないのかもしれません。だとしたら、錯覚するような営業トークをしている可能性も十分考えられるのです。

 

誤解や錯覚をしたままでのアパート・マンション建築のリスク

一般的には、築年数の経過とともに賃料は下がります。入居者が少なければ、管理会社の収益も減ります。

管理会社も家賃の下落や空室が多く発生しているならば、会社の利益が確保できず、当然そのままの契約条件でサブリースを続けるはずもなく、賃料交渉に入るのです。利益を出して納税することが民間企業ですから、利益のない仕事は続けません。

その結果、後から「こんなはずではなかった」と後悔するオーナーも少なくありません。クレームを言う程度で済めば良いのですが、何度も家賃を減額された結果、賃料が下がりすぎ、借り入れ返済は持ち出しになる可能性もあります。

サブリース賃料の減額を拒んでいたら、契約そのものを解約されるという事態も起こっています。サブリースと言えども、リスクはオーナー負担していることから、国民生活センターが「家賃を減額することが可能なこの仕組みは、リスクを会社から家主に転嫁するもの」と注意を呼びかけています。空室や家賃減額による収益減のリスクは、オーナーが負担している事実を忘れてはいけません。

相次ぐトラブルをうけ、2016年には国土交通省からサブリースの賃料減額リスクなどの重要事項説明や、契約成立時に書面を交付し、管理事務を報告することが義務化されました。さらには、2020年6月に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が制定され、同法のサブリースに関連する措置(サブリース業者とオーナーとの間の賃貸借契約の適正化に関する措置)が2020年12月15日に先行して施行となりました。

 

サブリースの利用において重要なことは「事前確認」です。
最低限、下記は契約前に確認しましょう。

・修繕の保証範囲(負担区分)

・保証される賃料

・敷金の取り扱い

・礼金の取り扱い

・更新時の手数料 

 

サブリースには本当にメリットがあるの?

管理会社は損をしないよう、家賃の下落や空室が多くなれば、賃料の減額を提案します。

オーナーが家賃下落リスクや空室リスクを負担しているのです。

賃料の10%~20%のサブリース委託費を支払うならば、管理会社が儲かるだけのような仕組みにも見えてきます。本当にメリットがあるのでしょうか?

 

安心してください。悪徳業者ばかりではありません

すべての業者が悪徳なわけではありません。

契約時にきちんとリスクを説明してくれる優良な管理会社も存在しますので、契約時にきちんと確認しておけば多くのトラブルは防げます。

そして、そもそも空室リスクや家賃下落リスクを低減するための方策を考えた上での建築提案をしてくれる会社を選ぶことも大切です。アパート・マンション経営において、空室や家賃の下落リスクは避けて通ることができません。

いくら2年ごとに家賃を見直せると言っても、しっかりとオーナーの賃貸経営を考え、収益や建物の価値を高める努力をしてくれる管理会社も存在します。サブリース会社として、一部リスク負担してくれる会社もあります。そのような管理会社をパートナーとして選択すべきです。入居者募集力のある管理会社であれば、家賃をUPすることも不可能ではありません。

 

サブリースのメリットを理解し、良きパートナー選びと契約前の確認が重要

実は、入居者募集力のある管理会社であれば、サブリースは不要です。なぜなら、常に満室経営を維持してくれるので、わざわざ10%~20%程度のサブリース委託費を支払わなくても良いのです。

サブリースとは、本来、建物管理や賃貸経営の手間が省け、一定額で賃料が保証されるため、空室などによる収入変動がなく、安定的な賃貸経営が可能な仕組みです。ある意味、「時間を手に入れる」仕組みと考えるべきです。

例えば、賃貸経営に不慣れな方、他の仕事・事業によりアパート・マンション経営に時間がさけない方には、サブリースは有効な仕組みとなります。

入居者募集力のあるしっかりとした管理会社をパートナーとして選ぶことが大切です。

その上で、あなた自身の賃貸経営に対する時間のかけ方・考え方に応じて、サブリースを活用する・しないを選択することがポイントです。