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サブリース契約で注意すべきポイント|かぼちゃの馬車問題

サブリース契約 注意

スルガ銀行の不正融資で注目を集めた「かぼちゃの馬車問題」を理由に、サブリース契約に不安を抱く不動産投資家の方は多いのではないでしょうか。

もちろんサブリースの家賃保証システムには、将来的な家賃の引き下げなど懸念される要素もあります。しかし、そもそもサブリース契約はリスクを回避する手段ではなく、サブリースで空いた時間を有効活用するための方法として利用するのが好ましいと言えます。

今回は、かぼちゃの馬車問題を確認しながらサブリースを利用する本来のメリットと注意点をご紹介しますので参考にしていただき、サブリースを上手に使いこなして不動産投資を成功させてください。

 

かぼちゃの馬車問題とは

女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」が2018年4月に破綻した事件をきっかけに、スルガ銀行が行った不正融資が社会的な問題としてクローズアップされています。

問題となったシェアハウスの販売・管理を行っていた「スマートデイズ」のサブリースシステム(一括借り上げ・賃料固定)が破綻し、同社からオーナーへの賃料の支払いが停止するケースが続出しました。

その結果、オーナーは賃料が得られず1億円近い物件の購入費用の支払いができなくなったため、同社の元役員を相手に民事訴訟を起こしました。

さらに不正融資事件で悪用されたサブリースシステム自体にも疑問の目が向けられています。

 

「かぼちゃの馬車」の問題点

かぼちゃの馬車問題でサブリース契約自体に法的な問題があったわけではありません。

今回かぼちゃの馬車を販売・管理するスマートデイズが経営破綻となった背景には、

 

①スマートデイズによるビジネスモデルの欠陥

②スルガ銀行の不正融資

 

が挙げられます。

 

スマートデイズのビジネスモデル

わずか約4年で800棟ほどのシェアハウスを展開してきたスマートデイズのビジネスモデルとは、シェアハウスを個人投資家等にサブリース契約で販売するものですが、通常の不動産経営では考えにくい特徴がありました。

つまり、満室状態で稼働しても得られる家賃収入よりもオーナーへの支払賃料が多く、スマートデイズが毎月損する契約になっており、損失はスマートデイズが投資家に販売する物件価格から得る収入や、人材派遣事業で提携先の会社から受け取る紹介料で補うというものでした。

しかし実際は物件の入居率は低く、人材派遣事業での紹介料も少なかったため家賃収入が大きく落ち込み、事業運営が厳しくなっていきました。

このような特殊なビジネスモデルが経営破綻の主な原因となりますが、メインバンクだったスルガ銀行が新規融資を停止したことが決め手になったと指摘されています。

 

スルガ銀行の不正融資

スマートデイズが手掛けていたシェアハウスは1棟1億円程度と相場より高額ですが、一般の会社員を対象に「家賃ゼロ円でも儲かる不動産投資」との宣伝文句で販売されていました。

スルガ銀行はスピード感ある融資姿勢と貸出金利の高さで積極的な融資を行っており、通常なら融資されない人にもフルローンで融資していたため、シェアハウスの販売数は物凄い勢いで伸びていきました。

しかし経営は上手くいかず、スマートデイズの経営破綻をきっかけに、投資家の自己資金を多く見せるなど改ざんしていたことが明るみになりました。さらにスルガ銀行は、書類が改ざんされたことを知りながら融資していたことが内部調査によって判明しました。

このように「かぼちゃの馬車問題」は、無理のあるビジネスモデルと不適切融資によって、多くの投資家たちが損害を被りました。その後、被害を被ったオーナーたちは被害弁護団を結成し、スルガ銀行に解決を求める調停を申し立て、「不動産(かぼちゃの馬車)の購入に使った融資(ローン)と不動産を相殺する」という内容で合意しました。

当初、対象となったのは調停を申し立てていたオーナー257名(被害総額約440億円)でしたが、その後2021年3月には285名(被害総額約440億円)、4月には404名(被害総額約605億円)についても調停が成立し、事件は解決となりました。

しかし一方で、サブリース契約は正しく利用すれば時間的な余裕が生まれ、不動産投資を加速させることができるシステムでもありますが、かぼちゃの馬車問題により、サブリースシステム自体に悪い印象が付いてしまいました。

 

サブリースのメリットデメリットと注意点

サブリース契約を利用する本来のメリット・デメリットと注意するべきポイントを見ていきましょう。

 

サブリースとは

通常、賃貸経営では物件の所有者であるオーナーが入居者と賃貸借契約を結び、家賃収入はすべて自分に入ります。サブリースとはそもそも不動産会社がオーナーから物件を借りる契約を結び、入居者に転貸する事業形態を指します。

オーナーは不動産会社から一定の賃料を得ます。多くの場合、賃料は実勢家賃をベースにその一定割合で決められ、空室であっても賃料が支払われる「家賃保証」が魅力になっています。その代わり、不動産会社が保証する家賃は、入居者が支払う家賃よりも低くなります。

 

サブリースを利用するメリットとデメリット

実際、不動産関連事業者が建物を企画・開発して販売する際にサブリース契約を条件として提供するケースがよく見られます。

不動産会社はオーナーから建物を賃貸するとき、周辺の物件相場から賃貸料を設定して、「満室時における入居者からの家賃総額」が「オーナーに支払う賃料」より高くようにするのが一般的です。つまり、入居率が高いほど不動産会社にとってはメリットとなります。

一方で、オーナー側から見れば受け取る賃料が若干安くなるため、損するように見えます。オーナーが入居者と直接賃貸契約をして家賃を得るほうが、サブリースを利用するよりも多くなるからです。

それ以外にも、入居者の審査を不動産会社が行うため自分がふさわしくないと思っている人物像の入居や不動産会社の倒産リスクなどがサブリースのデメリットとなります。

しかし、物件は常に満室であるとは限りません。空室があればその分収入は得られないことになります。

そこで、一括借り上げ方式のサブリース契約を結ぶと、空室状態にかかわらずまとまった固定賃料が得られ、収益の見通しも立てやすくなります。

また、賃貸事業での維持管理や家賃の回収、入居者が入れ替わる際の原状回復や入居者の募集等など手間がかかる仕事を事業者に全て任せることができるのもサブリースの大きな魅力です。

会社員として勤務しながら管理業務の全てに対応するのは負担が大きいですが、サブリースを利用すれば「時間」を手に入れることができ、本業が忙しい方にも向いている仕組みです。空いた時間を活用し、新たな投資物件を検討する余裕も生まれます。

このように、サブリース契約は一定の家賃収入の確保が見込めるため「リスク回避」の側面だけが注目されがちですが、本来は「賃貸業務の手間削減」「時間確保」といった付加価値の高いシステムであると言えます。

後述するように、サブリース契約を結べば絶対に安心というわけではないので、不動産投資を加速させる一つの手段として捉え、利用するのが好ましいでしょう。

 

サブリースを利用する際の注意点

投資家がサブリースを利用するメリットは大きいのですが、契約通りに実行されなければ意味がありません。

また、サブリース業者には賃料減額を請求する権利が認められているため、将来的な家賃収入の減少を見込んでおく必要があります。

そこで、サブリースを上手く活用するには以下のような点に注意することが大切です。

 

①適切なサブリース業者選び

サブリースシステムを悪用する事業者が少なからず存在するため、適切な事業者選びが必要です。

スマートデイズでは「30年間の賃料保証」を売りにサブリース契約による販売が展開されましたが、結果的に賃料の支払いが滞りました。スマートデイズ以外のサブリース契約でも賃料の減額などでトラブルが起こるケースが少なくありません。

適切な業者を選ぶためには、サブリース契約の実績が豊富なだけでなく、契約事例でのトラブルの有無も確認することが大切です。具体的にはサブリース案件の数や実施した年数のほか、訴訟問題の件数やその内容などです。

「サブリース案件の実績が少なく提供した期間も短い」
「訴訟案件が多く対応が不誠実」
などの場合は、再検討したほうが良いでしょう。

そして最も重要なことは、「入居者募集力の高い業者であること」です。

入居者募集力の高い業者であればサブリース賃料の減額リスクも少なく済み、より安定性の高い賃貸経営が可能となります。

 

②契約内容

サブリースの契約書で注意するべきポイントは、「賃料の変更の可能性」「契約期間中の解約の可能性」「契約後の諸費用」になります。

一定期間の賃料が保証されるわけですが、「状況により賃料減額」との条項が盛り込まれているのが一般的です。そのためどのような状況・期間で賃料が変更されるのかを確認し、妥当性を見極める必要があります。

また、契約期間中の解約の可能性も確認しておきましょう。所有物件を都合により売却したい場合でも解約できないこともあります。

一方で、契約解除を突然通告されることもあるため、確認しておくことが重要です。契約後の費用では、原状回復費や修繕費などについて確認しておきましょう。

入居者が入れ替わる際の原状回復、毎月の維持管理費や大規模修繕費はどちらが負担することになるのかを確認しておくことが大切です。

ほかにも家賃保証の免責期間、解約時の違約金などもチェックしておきましょう。

 

③物件の収益性

サブリース契約自体に瑕疵がなく優良なサブリース業者でもあっても、物件自体に魅力がなければ不動産投資は成功しません。

投資物件として価値の低い案件でサブリース契約しても、早い段階で賃料減額が求められ、結果として投資家が損することになります。5年先、10年先でも賃料を維持しやすい物件であるかを見極める必要があります。

「物件の立地」「入居者ターゲットの設定」「物件価格」「家賃および事業者からの賃料」などを相場と比較した上で、物件の収益性を評価し、儲かる見込みがあるかを十分に検討することが大切です。

物件の収益性の判断は投資初心者にとって簡単ではありません。

そのため「○○年間、家賃が保証されます!」というような事業者の宣伝文句に惑わされず、適切に判断することを心がけましょう。

 

まとめ

サブリースとは、「時間を手に入れる」「安定性を高める」ための仕組みであり、家賃が長期に渡り、必ず保証されているわけではありません。

不動産投資は「サブリースだから安心」という考え方ではなく、

 

①サブリースではない通常の建物管理でも賃貸経営として適切に収益が見込める物件なのか?

②「入居者確保力」の高い業者なのか?

 

という視点が大切です。

入居者確保力の高い業者に建物管理を委託すれば、サブリースを選択することで収益性は落ちてしまいますが、「時間を手に入れたい」「より安定性を高めたい」と思われる方に有効な仕組みがサブリースと言えます。

以上の点を理解した上で契約内容を確認し、あなたの不動産投資目的や環境に応じてサブリースを利用すべきかどうか判断しましょう。