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アパート・マンション経営|適切な修繕のタイミングと費用の目安

修繕 費用 目安

アパートやマンション経営では、収益性を高く維持することも大切なポイントです。特に建物の老朽化を防ぐ修繕工事は、適切なタイミングで実施しなければなりませんが、工事の内容によってその時期は異なり、工事費用も異なります。そこで今回の記事では、アパートやマンションの経営で必要となる修繕のタイミングとその工事内容、費用について分かりやすく解説していきます。

 

アパート・マンション経営で必要な修繕

修繕 費用 目安

アパートやマンション経営をしているとさまざまな経費が発生しますが、中でも大きな割合を占めるのが「修繕費用」です。

アパートもマンションも築年数の経過によって建物が老朽化し、老朽化が進んだ物件は居住性に影響が出るため、賃借人が付きにくくなってしまいます。また室内も壁紙や設備などを定期的に補修しなければ、居住性に影響が出るため、空室になる可能性も高まります。

国土交通省住宅局が発表した「賃貸住宅の計画的な維持管理及び性能向上の推進について」の中で、物件の「計画修繕ありの場合」と「計画修繕なしの場合」の実質利回りをシミュレーションした結果は以下の通りです。

 

【木造】

計画修繕あり:2.78%

計画修繕なし:2.13%

 

【RC造】

計画修繕あり:2.53%

計画修繕なし:1.90%

 

このように、計画的に修繕を行うことによって利回りが高まり、収益性が向上することがわかります。賃貸利回りを向上させるには、以下の3点を適切なタイミングで実施することが大切です

 

【適切なタイミングで実施すべき修繕】

①建物全体の保守のために行う「大規模修繕」

②賃借人がつきやすくなるための居室内の修繕を行う「原状回復修繕」

③建物の老朽化を防ぐための「予防修繕」

 

それぞれの修繕について詳しく見ていきましょう。

 

建物維持のための大規模修繕

大規模修繕は10年〜15年のサイクルで行うのが一般的です。

その費用は物件のオーナーが負担します。区分所有のマンションの場合には、毎月の修繕積立金で支払いますが、予算が不足する場合、積立金が増額となる場合もあります。

大規模修繕の内容は実に多岐に渡ります。この修繕の対象となるのは、アパートやマンションの建物そのものです。各住戸内に関しては大規模修繕の対象とはなりません。

大規模修繕を行う目的は建物の外観を維持することと、耐久性を維持することです。例えばアパートやマンションの外壁は経年により劣化し、見た目が悪くなっていきます。それだけはなく、ひび割れなどが発生することで雨水が建物の内部に侵入し、耐久性を低下させてしまいます。そこで外壁塗装やコーキングの補修などを行い、雨水の侵入を防ぐとともに見た目を綺麗にする必要があります。

 

空室にしないための小規模修繕

小規模修繕(原状回復修繕)は賃借人が退去したタイミングで行います。

新たに賃借人を募集するにあたり、室内が汚れていたり設備に不具合があったりしたままでは、借り手がつきにくくなります。そこで見た目を綺麗にし、設備をメンテナンスして居住性を高めます。

基本的には、賃借人が退去した前の状態に戻すことを目的に室内の修繕を行います。その費用は基本的に賃借人が納めた敷金から支払うことになります。ただし、賃借人が故意に傷をつけたり設備を壊したりした場合、修繕費用を別途、請求するケースも多くあります。

 

老朽化を防ぐ予防修繕

アパートやマンションをより長く快適に住める状態にするためには、老朽化を防ぐ必要がありますが、そのための予防措置としての修繕もあります。

基本的には防水に関する修繕によって老朽化を防ぐことが可能です。屋上防止やバルコニー、ベランダなどの防水加工があります。

また、タイルの継ぎ目である目地(コーキング)もひび割れがあれば処理をします。ここから雨水が躯体内部に侵入するのを防ぐことで、建物を長持ちさせることができます。

アパートの場合には外壁塗装を定期的に行うことで、防止処理も行えます。外壁塗装のサイクルは使用する塗装の種類によって異なります。

 

主な修繕工事と修繕内容・時期・費用の目安

アパートやマンション経営をしている方、あるいは検討している方にとっては、実際にどれほどの費用がかかるのかが気になるところでしょう。そこで主な修繕工事の内容とともに、費用の目安をご紹介します。

 

外壁工事

外壁工事には主に「外壁塗装」と「タイルの張り替え」の2種類があります。アパートの場合は多くが外壁塗装に、マンションの場合にはタイル張り替えになります。

外壁塗装は既存の塗装をはがして、下地と防水加工を行ったうえで新しい塗装をします。
外壁塗装の時期は、既存の塗料の種類によって次のように異なります。

 

【外壁塗装の時期】

・アクリル樹脂塗料:5~8年

・シリコン樹脂塗料:10~15年

・フッ素樹脂塗料:15~20年

 

費用も使用する塗料によって異なりますが、目安は平方メートルあたり単価で平均1,724円です。

タイルの張り替えについては、割れている部分や剥離の可能性がある部分のみを交換するのが一般的です。時期としては大規模修繕工事を行うタイミングになります。費用の目安は平方メートルあたり1,436円です。(参照:一般財団法人 建物物価調査会「改修工事(集合住宅)のマクロ的価格傾向に関する研究(その7) 報告書」 以下同)

 

防水工事

防水加工は建物の躯体内部に雨水が侵入しないようにする工事です。場所としてはバルコニーや建物内部の階段、屋上などがあります。また、外壁工事におけるシーリング加工も防水加工の一種となります。

工事を行う時期は大規模修繕工事のタイミングです。費用の目安は以下の通りです(いずれも1平方メートル当たりの費用です。また、以降すべての費用において、マンション1戸あたりの平均単価もカッコ内に記載してあります)。

 

【防水工事費用の目安】

・屋根防水:1,442円/㎡
(115,804円/マンション1戸あたり)

・バルコニー床防水:992円/㎡
(78,741円/マンション1戸あたり)

・解放廊下、階段防水:823円/㎡
(54,604円/マンション1戸あたり)

・シーリング:1,198円/㎡
(90,032円/マンション1戸あたり)

 

給排水管工事

キッチンの水道や流し、トイレや洗面台、バスルームなどの給水管と排水管の修繕工事です。配管は時間の経過とともに老朽化するので、工事の時期としては新築してから25~30年が経過したタイミングが目安となります。必要な工事費用は以下の通りです(平方メートルあたり単価とマンション1戸あたり単価)。

 

【給排水管工事費用の目安】

・給水管:4,240円/㎡
(334,274円/マンション1戸あたり)

・雑排水管、汚水管:3,605円/㎡
(283,368円/マンション1戸あたり)

・給湯管:4,801円/㎡
(418,929円/マンション1戸あたり)

 

 

そのほかの修繕

アパートもマンションも、共用部にはさまざまな設備があります。これらも賃借人が快適に住むためには、定期的な修繕工事が必要です。防水や給排水管以外に必要となる設備の工事費用は以下の通りです。

 

【その他の修繕費目安】

・照明器具:785円/㎡
(42,718円/マンション1戸あたり)

・ガス設備:3,564円/㎡
(189,960円/マンション1戸あたり)

・共用部分内装:696円/㎡
(35,727円/マンション1戸あたり)

・エレベーター全構成機器:6,291円/㎡
(275,309円/マンション1戸あたり)

・自転車置場:383円/㎡
(11,590円/マンション1戸あたり)

・機械式駐車装置:305円/㎡
(29,935円/マンション1戸あたり)

 

 

計画的な修繕費の積立や管理会社との連携が重要

区分所有のマンションを購入すると、修繕積立金を管理費とは別に毎月支払います。アパートや一棟マンション経営をする場合には、オーナー自身が大規模修繕工事のための修繕費を積み立てなければなりません。

そのためには、おおよその工事費用を見積もったうえで、毎月いくら積み立てなければならないのかを計画することが大切です。そこで管理会社と連携する必要があります。

修繕費用は大規模修繕のほかに定期的に行うものがいろいろとあります。それらの工事も計画的に行うため、費用をきちんと確保しておくことが重要です。

 

長寿命化・保証付きの物件選びをすることも選択肢の一つ

新築物件の場合、建物の長寿命化に配慮した工法・仕上げなどを採用して修繕頻度や費用を低減することや、一定までの修繕を保証する仕組みがある業者(建設会社)の物件を購入(建築)することも選択肢として考えられます。

修繕費などを低減するために初期の建設費が若干割高にはなりますが、長期的な目で見ると修繕の発生が低く、また支出が平準化される仕組みを活用することで賃貸経営の安定化が図れますので、このような物件や仕組みを選択することは、将来の資産形成を目的とする方や、副業で手間をあまりかけたくない方にお勧めできます。

 

まとめ

建物の見た目が古く、汚れていると入居は敬遠してしまいます。また、修繕を怠れば大きな事故につながったり、それ以上の代償を支払うことになったりする可能性もあります。安定した収益をあげるためにも、賃借人が安心・安全に住めるようにアパートやマンションを適切に維持管理することが大切です。その費用を確保するため、どのような工事が、いつのタイミングで発生するのかをしっかり把握しておきましょう。