築20年以上の築古アパート物件の選び方とお得な節税効果
不動産投資で物件探しを行っていると、築20年以上経過している古い物件が数多く売りに出されているのが目に留まります。
一般的に築20年以上経過しているなど、耐用年数を超えた「築古アパート」は、新築と比べると「価格は安く、利回りは高い」のですが、古いが故に、建物は長持ちするのか?修繕費が多く必要となるのでは?といった心配から、敬遠されがちです。
しかし、このような築古アパートを購入することで、得するケースもあります。
所得税などの節税効果が期待できるためです。
ただし、すべての築古アパートが該当する訳ではありません。
今回は、節税対策になる理由と物件を選ぶ際のポイント(メリットや注意点)をまとめました。
節税のポイントは減価償却費、所得税などの節税対策への効果
減価償却費とは、お金の支出を伴わない税務上の経費です。
アパートなどの減価償却資産には、法定耐用年数による償却期間が定められており、木造アパートならば22年です。
この法定耐用年数を経過した築年数の物件は、最短4年で減価償却できるのです。
この短い期間で減価償却できることが、築古アパートの大きなメリットの一つです。
例えば、築23年の木造アパートが建物価格2,000万円、土地価格2,000万円、合計4,000万円で販売されていたとします。
このアパートは、耐用年数を超えた築年数であることから、減価償却が4年で可能です。よって、建物価格の2,000万円を4年で減価償却する事ができます。
2,000万円を4年で減価償却すると、1年当たりの減価償却費は約500万円です。
この木造アパートが利回り10%であれば、400万円相当の年間収入が見込めます。
400万円の家賃収入から固定資産税・維持管理費等の必要経費合計が約150万円相当とすると、手残りは、400万円-150万円=250万円となります。
この手残り250万円から減価償却費として500万円を経費として引けるのです。
税務上▲250万円の赤字となり、手取り収入に対する所得税や住民税が節税となります。
他の収入に加算されることなく、不動産投資における収入250万円相当の現金が残せるのです。
更に、この状況が減価償却期間である4年間続きます。
仮に大きな修繕や退去が発生しなければ、4年で1,000万円(250万円×4年=1,000万円)の現金を貯蓄することができます。
この仕組みが十分に活用できる物件であれば、築年数が古い物件は所得税などの節税対策にメリットがあります。
節税効果の高い物件の選び方
節税対策として築古アパート物件を選ぶ際は、建物価格の比率がなるべく高い物件を選択することが重要です。
土地価格は減価償却の対象にはなりません。つまり、物件価格のうち、建物価格の割合が大きいほど節税効果も高まります。
デットクロスに注意
デットクロスとは、減価償却費よりも借り入れの返済元金が大きくなる状態のことです。
築古アパートは減価償却期間が短いため、当初の償却額が大きく所得税の節税効果が得られますが、数年後に減価償却期間が終了する際には注意が必要です。
税務上は黒字となり所得税が大きくなりますが、借り入れがある場合、経費化できない借り入れの元金返済をしなければなりません。つまり、収支(キャッシュフロー)が悪化します。
融資額が多い場合、収入に対して所得税が大きくなり、現金がないにもかかわらず元金返済しなければならないため「黒字倒産」という可能性もあるのです。
失敗しない築古アパート選び6つのポイント
築古アパートで不動産投資を考える場合、特に注意していただきたい物件選びのポイントをまとめてみました。
1.修繕費の予測と節税効果の検証
築古アパートは、修繕やメンテナンスの費用が必要になります。
築古アパートの不動産投資で失敗したと言われる理由の大半が「修繕費の予測が甘かった」ことにあります。
物件購入の際には、事前にその費用を見込んだ上で収支計画をたてておく必要があります。適切な家賃設定で修繕費を見込んでもキャッシュフローが維持できる価格で物件を購入することが大切です。
売り出されている価格ではなく、「適正な価格」で購入するようにしましょう。
減価償却費による節税効果が望めるかどうかも必ずチェックしてください。
2.「融資期間が短くなる」または「融資が受けづらい」
金融機関によっては、法定耐用年数までの融資期間を設けています。このような金融機関からは、耐用年数を超えた物件の購入に関して融資を受けることが困難です。
ところが最近は、築古と言われる耐用年数を超えたアパートにも、20年以上の長期融資が可能な金融機関も増えてきました。しかし、まだまだ一般的ではないことも事実です。
もし、物件を売却しようとした際に、築古アパートの融資を取り扱ってくれる金融機関が少なければ、それだけ売却しにくくなります。
このデメリットを回避するためには、建物の評価がゼロになっても土地評価(価格)が維持できていることがポイントです。つまり、資産価値を維持できる立地での購入検討をお勧めします。
長期的に見て土地評価が維持できていれば価値のある資産を所有していることになり、融資を受ける上でも土地の担保評価が見込めます。資産形成の上でもメリットがあり、建て替えや売却もしやすい資産となります。
3.旧耐震基準の物件は避ける
昭和56年以前に完成した建物は旧耐震基準の物件です。
木造アパートであれば、築35年以上経過している物件が該当します。
不動産投資の経験豊富な方や資産背景が十分ある方であれば、物件再生ノウハウによる活用や別の投資目的で購入することも考えられますが、初心者向けではありません。よって、築古アパートを選ぶならば、新耐震基準でもある築25年くらいまでを対象にすることをお勧めします。
4.3点ユニットや1戸当たりが極端に狭い物件は避ける
1戸当たりの面積が狭い物件は、注意しましょう。
バブル期に3点ユニットと呼ばれるバス・トイレ・洗面が一体となったワンルーム物件が数多く供給されましたが、ビジネスホテルのような物件で入居者に人気がありません。ワンルームタイプの築古アパートでは、このタイプが多く存在します。
3点ユニットは工夫次第でクリアーできるデメリットですが、部屋そのものが狭すぎると改善が難しくなります。1戸当たりの面積については、一般的に都心部は狭く、郊外へ行くほど広くなっています。
少なくとも15㎡以上の戸当たり面積を検討するなど、購入する物件のエリアで入居者ニーズのある広さと家賃バランスを比較検討しましょう。
5.賃貸需要を確認する
物件に空室があるならば、入居者がすぐに決まるのか?これも大切なポイントです。
適切な家賃設定で入居者の需要がある物件かどうか見極める必要があります。
机上の家賃設定で高利回りを示していても、実際に入居者がその家賃設定で入らなければ意味がありません。また、どんなに家賃が安くても、入居者ニーズがなければ空室は埋まりません。
想定する家賃設定が適切か、今後の賃貸需要があるのかなどの確認も必要です。
6.どんなに安くても価格だけで選んではいけない
稀なケースですが、投げ売りのように土地価格相当で物件が売り出されていることもあります。
どんなに安いからといっても、建物が賃貸住宅として利用できなければ、取り壊すための解体費が必要となります。
また、悪質な入居者や滞納者などが住んでいる場合は、思うように家賃収入が見込めず、取り壊すことも改修やリノベーションをすることもできません。
価格だけではなく、過去の修繕履歴や入居者の属性、物件の立地条件など、物件選びで注意すべき基本的なポイントに注意しなければ、賃貸経営は成り立ちませんので注意してください。
築古アパートによる不動産投資は、出口戦略を見据える
築古アパートによる不動産投資は、出口戦略を見据えた適正価格を見極める目を持つことも大切な要素です。
例えば、修繕費の見込みが悪かった場合や入居率も低下している場合、想定より低くしなければ売却できない可能性もでてきます。
思うように売却できない場合には、更地にして売却することも選択肢の一つです。
更地の場合、買主が自由にアパートや自宅を建設するなど選択肢が広がり、土地の価格が相場並みであれば売却は困難ではありません。融資も新築物件として取り扱ってもらえるようになります。
但し、築古アパートを解体する場合、入居者の立ち退きなどの労力が必要となります。築古アパートの売却は、物件を売買するだけではなく、立ち退きなどの相談にのってもらえる業者を選ぶことが必要なため、まずは、委託している管理会社に相談することからはじめましょう。
高利回りの築古アパートに潜むリスク
築古アパートでの不動産投資は新築物件と異なる注意すべき点が多々あります。
しかし、手頃な価格で利回りの高い物件が取得できるなど、メリットがあるのも事実です。あなた自身が物件を見極める目を持つことが重要ですが、目に見えないリスクが潜んでいる場合もあります。
築古アパート購入の際は、物件を良く知り、購入してからも賃貸管理を任せることのできる業者に相談することをお勧めします。
まとめ
築年数が古いと入居者に敬遠されてしまうのではないか?と考えてしまいますが、耐震基準を満たした建物で、適切に修繕・メンテナンスをしていれば、入居者にも受け入れられる物件になります。
空き家対策が社会問題として取り上げられている影響もあり、国や地方自治体も様々な取り組みなども始まっています。
また、耐用年数を超えた融資が可能な金融機関も増えてきました。
そんな中で、手ごろな価格で不動産投資が可能な築古アパートも視野に入れると、選択肢が広がります。
実際に、都心部などは価格が高止まりしている影響もあり、不動産投資の物件選びは中古物件へとシフトしている方もいます。
適切な価格・家賃設定で収支が成り立つ物件であれば、築30年を超えた木造アパートでも市場価値のある物件になり得ます。
特に節税対策を考えている方は、節税ができる仕組みを理解することで、節税効果の高い不動産投資を行うことが可能となります。売却時期なども考慮した物件選びをすると良いでしょう。
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