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事業承継で不動産を活用!注意点と対応方法をチェック

自身の会社や事業など、培ってきた財産を後継者に受け継がせる事業承継。その資産の中には不動産も含まれますが、滞りなく進めるためには果たしてどのような対応が必要なのでしょうか?

ここでは主に不動産を事業承継する際の注意点や代表的な後継者先、早めの行動がカギとなる理由などについて詳しく紹介しています。

事業承継の基本概念

そもそも事業承継とは、一般的には「先代の経営者が退任する前に、会社の経営権や資産、理念など、事業に関する全てを定めた後継者に受け継ぐ」ことを指します。

現在の経営者と後継者が存命のうちに話し合いを進められるのがメリットですが、権利や財産だけでなく負債もまとめて渡さなければならないので、双方が納得できる内容を突き詰める必要があります。

ポイント1:法人をそのままの形で残すことができる

事業承継は親族間で行われることもありますが、事業やノウハウに興味を持った第三者との間で取り決められるケースも少なくありません。

親族間で後継者を探すのが難しい場合や、経営難に陥っている場合でも他者(他社)に法人をそのままの形で引き継げるのです。

ポイント2:不動産の資産は節税対策に

事業承継において受け継がれる資産の中に含まれる不動産は、現金より相続税が低く設定されているため、上手く活用することで節税対策になる可能性があります。

また、会社の建物をはじめとする所有不動産の評価を見直すことで税金が抑えられることもあるので、不動産事業承継は早めに準備を行うのが望ましいと言えるでしょう。

不動産事業承継の注意点

このように、後継者不足等に悩む経営者の方にとって様々な利点がある事業承継。
しかし、スムーズに行うためにはいくつかの注意点を押さえておく必要がありますので、確認しておきましょう。

税金と手数料の負担

事業承継においては事業用の資産も引き継ぐことになりますが、資産状況によっては相続税や贈与税の負担が予想以上に甚大になる恐れがあります。なぜならばこれらの税金は、承継する資産の評価額に基づいて計算されるからです。

これに関しては平成30年に改正された「特例事業承継税制(※)」等を利用することで、猶予や免除措置を受けられる可能性があります。今後5年以内に特例承継計画書を提出、かつ10年以内に実際に事業承継を行う予定がある後継者の方はぜひチェックしてみてください。

特例事業承継税制

・贈与税・相続税の納付に対する猶予・免除(一定の要件を満たす必要あり)
・納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の3分の2まで)の撤廃
・納税猶予割合の引上げ(80%から100%)

※参照:国税庁HP

法的リスクの管理

特に親族以外の第三者や、複数いる相続人の中で特定の1人に事業承継を行う場合、トラブルになりやすいのが「後継者以外の相続人と遺留分の話し合いができていなかった」というケース。
相続人である以上法的な権利は平等なので、例えば会社の株式がそれぞれに譲渡されるといったようなことがあれば、後継者の経営権が脅かされるリスクも考えられます。

ただし、相続人全員があらかじめ合意すれば、民法の特例(※)により遺留分の請求ができないよう取り決められる可能性も。他の相続人と相談する際には、正しく確実に完了するためにも弁護士等の専門家を頼るのが良いでしょう。

※参照:中小企業庁HP

不動産評価の重要性

最後に、所有する不動産の評価も事業承継においては非常に重要。節税対策として新たに不動産を購入したり、設備投資を行ったりして承継に備える方法もあります。

また、会社や工場などの建物の評価額が下がっていればその分税金が抑えられる可能性も考えられるので、不動産鑑定士等に依頼して現在の正確な資産価値を判断してもらうのがおすすめです。
不動産は元々の評価額が高いため、税制面でも期待が大きいと言えるでしょう。

不動産事業承継の具体的な対応方法


不動産事業承継の後継者としては、大きく分けて「親族」「非親族」「M&Aによる第三者」が挙げられます。それぞれどのような違いがあるのか見ていきましょう。

親族内承継

まず、最も分かりやすいのが現経営者の子どもやその配偶者、甥、姪、孫など、親族から後継者を選ぶパターン。

古くからポピュラーな方法ですが、早くから親族内でその意志を共有し、本人に対してもしっかりと合意を取っておかなければ思わぬトラブルが発生する恐れもあります。そのため、成功のカギとして以下のような注意点を押さえておきましょう。

・後継者に十分な教育と経験を与えられるよう、早期に準備しておく
・本人、および親族全体にその意志を周知する

とはいえ、この方法は近年減少傾向にあるとも言われています。後継者に適した人材が見つからない、後継者となるポジションが既に別の職業に就いており、本人にその意志がない…などが主な理由のようです。

非親族承継

次に、親族ではない人材に事業承継を行うパターン。M&Aとも違い、あくまでも経営者自身の意志で後継者個人を選ぶのが特徴です。

身内ではなく、かつ仲介業者を頼るわけでもないとなると一体誰に?と疑問に思う方もいるでしょうが、一般的には「信頼できる従業員」や「社外から招聘した経営者」などを選ぶことが多いと言われています。

・経営者と信頼関係が構築されている人材を選ぶことが重要
・不動産に関しては、リースバックや投資信託(REIT)の活用も検討する

また、「親族内承継はできないが、かといって親族外で特定の人物を選ぶのも難しい」という場合、不動産に関してはリースバック(物件を売却し、その利益を得た上で賃料を支払い継続して使用し続けること)や投資信託(不動産の価値を分散し、大勢の投資家にそれぞれ少額で所有してもらえるようにする)を検討するのもひとつの方法です。

M&Aを活用した事業承継

複数のアパートやマンションを保有しているような、規模が大きい法人の場合、近年身近になっている「M&Aアドバイザリー等に相談し、他社に事業を引き継ぐ」方法もあります。

アドバイザーから提案された企業の中から目的や理念に共感できる相手(買い手)を選び、売り手となって会社を譲るという流れです。

メリット

・後継者不在問題を解決できる
・売却益を得られる
・雇用や取引をそのまま維持できる
・今後の事業の成長・発展が見込める

デメリット

・事業に対して思うように評価を得られないリスク
・適切な買い手と出逢えないリスク
・取引先との関係が悪化するリスク

信頼できる買い手に出逢えればメリットが大きいM&Aですが、なかなか出逢えない場合は思うように事業を評価されなかったり、契約の修正により取引先からの不興を買ってしまったりする恐れも。
検討する際にはまず仲介業者を吟味し、相性が良いアドバイザーを見つけましょう。

早期計画の重要性

このように、事業承継をスムーズに完了するには「事前準備」が不可欠であることが分かりました。事業を継続させたいと考えている場合には早くから後継者を探し、知識や経験を与えて育成に努めましょう。

また、贈与税や相続税などの問題もふまえ、不動産をはじめとする資産の価値をあらかじめ把握しておくことも大切です。具体的、かつ着実なステップを踏みながら、根気強く進めましょう。

M&Aによる承継も含め、不明点は専門家へ相談を

従業員の中にも適切な後継者が思い浮かばないのであれば、M&Aによる事業承継を検討するのもひとつの方法です。とはいえ、仮に親族内の承継であったとしても、引継ぎには様々な手続きが必要となります。
特に遺留分が発生した場合は話し合いも複雑になりかねないため、分からないことがあればすぐに弁護士や税理士などの専門家に相談してみてください。

この記事の監修者情報

西山 和成 Nishiyama Kazunari

  • 株式会社ユーミーホールディングス 常務取締役
  • 株式会社丸山アーバン 代表取締役社長
  • 株式会社湘南ユーミーまちづくりコンソーシアム 代表取締役
  • 日本PFIインベストメント株式会社 代表取締役
  • 株式会社marukan 取締役

経歴
1990年(平成2年)ユーミーらいふグループの株式会社丸山工務所に入社以来、資産家・富裕層などの不動産有効活用や売買、資産運用などのアセットマネジメントをはじめ、等価交換事業・不動産 の証券化事業・不動産特定共同事業などの不動産ソリューション事業及びPPP/PFI事業におけるプロジェクトマネジメントに携わる。

保有資格
宅地建物取引士