会社員が不動産投資で成功する正攻法|利回りだけじゃない物件の選び方
不動産投資は、会社員の方の副収入や、将来の資産形成、資産運用に有効な手段ですが、手っ取り早く収益を上げようと思って「利回り」を重視した結果失敗した、という話しをニュースなどで聞いたことがある方も多いと思います。
不動産投資には他にも重要なポイント、要素があるのです。
今回は、不動産投資において利回りが意味するもの、利回り以外の要素を正しく理解し、失敗しない物件の選び方について解説していきます。
不動産投資の利回りが示すものとは?
1.利回りは本当の投資効率を示した指標ではない
利回りとは、投資金額に対し、年間どれだけの利益が得られるのかを求めた指標です。
不動産投資では、表面利回り(グロス利回り)や実質利回り(ネット利回り)などが指標として使われますが、物件広告では表面利回り(グロス利回り)の方が表示されています。
この表面利回りとは、「その物件が満室となった場合の年間収入(家賃・共益費・駐車場などの全ての収入)を物件の価格で割った数値となり、下記の計算式で算出されています。
表面利回り (%)=満室時の年間収入÷物件価格×100
表面利回りは、不動産投資により必要となる費用や収益に対する費用が考慮されていないため、本当の投資に対する収益(リターン)は把握できません。
よって、不動産投資における表面利回りは目安として考えておき、正確な投資効率を見極めるためには「実質利回り」で物件の良し悪しを判断する必要があります。
なお、今回は「利回り」=「表面利回り」のことを示しています。
2. 良い立地・エリアの物件ほど利回りが低くなる
不動産投資は、そもそも安全に賃貸経営できる物件かどうかが重要です。エリアや立地は、空室リスク・家賃の下落リスク・将来の売却リスクなどに直結する大きな要因です。
様々なメディアや媒体などにより、全国の少子高齢化による人口減少、将来の人口流入・流出の予測が地域ごとになされています。人口が集まる都心部に近いほど賃貸住宅ニーズも高くなるため、家賃や入居率も高くなり、収益性も安定します。結果、将来の安定性から投資家にも人気のエリアとなり、利回りが低くても取引されるのです。
一方で、地方は人口流入が少なく、賃貸住宅ニーズも低くなります。そのため、空室リスクが大きく投資に人気のないエリアにもなり、結果として物件価格が下がり、利回りが高くなります。
例えば、
LIFULL HOME’S 不動産投資「見える!賃貸経営」
http://toushi.homes.co.jp/owner/
のサイトを見てみると、東京都の物件は平均利回りが低く、地方になれば利回りは高いなどの傾向が分かります。
都心部の物件は、
- 空室リスクが低い
- 家賃の下落リスクが低い
- 将来の売却リスクが低い(価格が下がりにくい)
- 人気があるエリアは価格が高くても取引される
などの理由により、賃貸事業としての安定性が高く、投資家からの人気物件となるため利回りが低くなるのです。
一方で、地方の物件は、
- 空室リスクが高い
- 家賃の下落リスクが高い
- 将来の売却リスクが高い(価格が下がりやすい、売却しにくい)
- 人気がないエリアは価格を安くしなければ取引されない
などの理由により、賃貸事業としてのリスクが高く、投資家からの人気がない物件となるため、利回りが高くなるのです。
3. 住居系と商業系、利回りはどちらがいい?
住居系の用途よりも、事務所や店舗系の方が利回りは高くなります。なぜなら、景気動向により事務所や店舗需要は変動しやすくリスクがあるからです。
事務所・店舗などは、景気の良い時は需要が多く、賃料水準も上昇しやすいのですが、不景気になれば需要そのものが減少するので、賃料を下げてもテナントが決まらないという事例は多くあります。
更に、どんなに立地が良くても事務所や店舗経営者の資質により、ビジネスが成り立たない可能性もあります。そして、事務所や店舗が退去されると次のテナントを探すのに時間がかかる場合があります。
テナント募集は景気の良いときは、すぐに次が決まる可能性はありますが、不景気の時代では、次のテナントを決めるまでに時間やテナント募集コストが多く必要となる場合があるのです。また、事務所や店舗がうまくいかない時は一般的に不景気の時代が多いため、次のテナントを見つけることが更に難しくなるのです。
一方で、住宅系は景気動向により急激に空室率が増えたり、家賃が下落したりすることはほとんどありません。
もう一つの理由として、建物を貸す床面積当たりの賃料単価は住宅系と比較し、事務所や店舗の方が高く設定できるため、利回りが高くなります。
例えば、同じエリアで同じ規模の物件で、
- a.全戸住宅
- b.店舗併用
があったならば、おそらくbの「店舗併用」物件の方が利回りは高くなります。
しかし、a・bとも同じような利回りで販売されているケースがあります。
この場合はaの物件のみ検討してください。
また、bのような物件が相場と同じ利回りで販売されているケースがあります。
この場合は検討しないでください。
なぜなら、店舗は賃料が住居よりも高いため、利回りが高くなっていなければ不自然だからです。
つまり、売却価格が高いので、得ではないという事です。
初めて不動産投資を行うのであれば、極力安定経営のできる物件を選択した方が得策です。事務所や店舗が含まれている物件は、かなり良い条件での物件ではない限り、安定性に欠けるためお勧めできません。
4. 建物構造により異なる利回り
一般的に、建物に係るコストが鉄筋コンクリート造(RC造)の方が高額になるとともに、耐用年数が長いため、RC造の方が利回りは低くなり、木造の方が利回りは高くなります。
例えば、住宅用途の耐用年数を比較すると、
- 木造:22年
- RC造:47年
となり、耐用年数はRC造の方が2倍以上になっています。
つまり、建物構造上はRC造の方が長持ちすることから、投資に対する建物価値の目減りが低い(遅い)ため、資産価値が高いと言えるのです。
耐用年数が長い分、RC造は中古物件でも返済期間を長く設定できることや担保評価が高いなど、融資条件が有利な場合があり、収益性も良いと言えます。よって、総合的に資産価値が高いため利回りが低くなると言えます。
物件の総額は高くなるのですが、もし同じ築年数で木造と同じ利回りのRC造の物件があったら、RC造を選んだ方がお得です。
5. 新築・中古アパートの利回りはどちらがいい?
新築は修繕などの経費が当面不要で融資条件も良いため、利回りが低くくなります。さらには、新築物件の場合、当面の間は修繕費等の経費が発生することはありません。
一方で、築年数の古い物件は修繕費などが発生する可能性が高くなります。築年数の古い物件は、新築時と比較すると修繕が必要になるリスクや、そもそも建物が長持ちしない可能性があり、短期間で投資資金を回収する必要がある物件と言えます。
利回りが高くなければ物件が売れないという事になるのです。
また、中古物件の方が借入の返済期間が短くなるため、収支計画(キャッシュフロー)上は新築物件の方が有利になります。そのため、中古物件は価格が安く(利回りが高く)なければ、新築と比較してメリットがないため、利回りが高くなるのです。
つまり、新築物件は利回りが低く、築年数の古い物件は利回りが高くなります。
不動産投資における資産価値を左右するポイント4つ
出口戦略を見据えた売却のしやすさ
不動産とは、金融資産と比較し、流動性(換金性)が低いと言われています。すぐには売却しないと思われるかもしれませんが、やはり万が一のことを考えて売却しやすい物件を選択しておくことも大切です。
少し損してでも良いから急いで現金化したいという場合でも、換金するのに時間がかかったり、売れなかったりすることで、不都合が生じます。
売却しなければならない状況とは「お金に困る状況」ということですから、換金できないという事は、とんでもないことに・・・という想像はできますよね。つまり、リスクという事です。
このような事態を避けるためにも、利回りの高さではなく、売却のしやすさも考慮した物件選びをすることが大切なのです。
家賃収入が見込める人気エリア
長期的な賃貸経営において、入居者に選ばれる(暮らしたくなる)エリアや立地であることが重要です。
売りやすい物件は価値ある物件とも言えるので、将来的にも価格の目減りが少なく、時代背景にもよりますが、売却による利益も期待できるのです。よって、売却しやすい物件は人気や将来性が見込めるエリアや立地の物件であり、利回りが低くなります。一方で、売却しにくい物件は利回りが高くなるのです。
家賃水準や空室率などから、本当の収益性を把握できているか
そもそも、利回り計算の基準になる家賃設定が妥当なのか確認する必要があります。
著しく付近相場より家賃設定が乖離している場合、仮に満室物件だとしても入居者が退去する都度、家賃を下げて募集しなければならない可能性があります。また、空室のある物件は、その空室時の家賃設定を付近相場で計算しているのかどうかも確認する必要があります。
仮に付近相場並みの家賃設定で募集していても、長期空室になっている場合は別の要因が考えられます。例えば、他の賃貸住宅と比較すると、追い炊き・温水便座・浴室乾燥機・オートロックなどの機能がついていないため入居者に人気がないなども考えられます。このような場合、募集家賃を下げなければ空室を埋めることができない可能性もあるのです。
以上のように、想定数字で算出された利回りでの物件選びをした場合、実際の収益性が若干少なくなる程度なら良いのですが、収支が行き詰ってしまったら「不動産投資の失敗」という結果になってしまいます。
収支計画でリスク負担を想定できているか
利回りとは、投資金額に対し、年間どれだけの利益が得られるのかを求めた指標です。つまり、物件の収支が回る・回らないは判断できないのです。
借入の金額により返済額が異なりますから、どのくらい自己資金を投入して物件を取得すると、実際の収益性がどうなるのか確認しつつ、どの程度のリスク負担ができるかをチェックしておくことも重要です。
例えば、
- 金利が○%まで上がっても返済可能か?
- 家賃がいくらまで下落しても返済可能か?
- 空室が何戸・何カ月発生しても返済可能か?
などを自己資金の額とともに計算しておくことをお勧めします。
初めての不動産投資ならば、このくらい慎重に数字の見極めをしてから物件選びをすることが大切です。わからなければ、物件を取り扱う業者に必ず計算してもらって提案を受けてみて下さい。
検討しているエリアの相場家賃や空室率を調べるのも、
LIFULL HOME’S 不動産投資 「見える!賃貸経営」
http://toushi.homes.co.jp/owner/
などのサイトで確認することができます。
尚、「東京都」という大きなくくりでのエリア設定ではなく、最低限「東京都○○区」など、なるべく狭いエリア・立地の範囲でデータを参照してください。
間取り別、沿線・駅別など、詳細に調べることも可能です。検討している物件と同条件の物件を比較し、空室率や家賃相場などが適切かどうかも確認しましょう。
利回りだけで判断してはいけない理由
では、利回りが低ければ、不動産投資は成功するのでしょうか?
利回りだけで判断する不動産投資が盛んに行われている状況では、不動産投資の需要があるから不動産価格が高くなり、利回りが低くなります。
つまり、人気のあるエリアや物件は、更に価格が高くなり利回りは低下しています。
しかし、人気があるという事は、一般的にリスクが低いと思われているため人気があるのであり、本当に将来的にも賃貸需要があるのか見極める必要があります。
「人気がある」=「将来的にも賃貸需要がある」ではない可能性もあるのです。
例えば、人気エリアであれば投資家の方々もそのエリアの物件探しをします。
業者は、人気エリアの物件を供給します。すると、需要以上に賃貸物件が供給されることになり、実は空室が増える可能性もあります。また、競争が激しくなるので、家賃の下落も考慮しなければなりません。
今現在、人気のエリアで空室率も低く安定経営が望める立地でも、あまりにも物件供給され続けると、将来的にはリスクが大きくなるという事です。
実際に、東京は人気があり空室率は低いのですが、物件供給戸数も多いため、実は空き家の総数も1番多いのです。
LIFULL HOME’S 不動産投資 「見える!賃貸経営」 参照
http://toushi.homes.co.jp/owner/
そういった意味でも、初めて不動産投資をするのであれば、ある程度の利回りの高さは確保しつつ、将来的に賃貸経営の需要が確保できそうな立地、例えば人口動態だけではなく、将来の街の発展性なども加味して物件選びをすることをお勧めします。
立地やエリアは大切ですが、利回りが低すぎてもいけません。
一方で、利回りの高さばかりに目を向けてもいけないということです。
利回りが高い物件には注意
間取りや住宅設備に問題があるケースがあります。
さすがに新築や築浅物件には、そんな事ないだろうと思われるかもしれませんがゼロではありません。
例えば、建築コスト削減を優先するあまり、人気のない建物をつくってしまった可能性などが考えられます。
部屋を狭くし、戸数を多く確保することで収益性が高まると予測して建設した結果、3点ユニットの物件になったり、1戸当たりの面積が付近と比較して狭くなったり、そもそもファミリー物件エリアなのに単身者物件だったりと、机上のプランで作ってしまったのか?と思うようなケースもあるのです。
このような物件を業者に勧められてつくってしまったオーナー様には申し訳ないのですが、仮にこの物件が売りに出ていたら、賃貸ニーズに見合う物件に改修やリノベーションする必要があるため、かなり安い金額(相場よりもかなり高い利回り)でなければ購入しないでください。
利回りが高くても投資すべき物件とは?
売却益も加味した運用期間全体の利回りが高い物件
売却により一時金として受領できる利益は、ある意味、利回りには表示されていない利益と言えます。一般的な利回りとは単の利回りです。
一定年数において賃貸経営し、ある時点で物件を売却した場合、売却時までの利益を加味した利回りを考えることが、本当の不動産投資における収益率(成果)とも言えます。
専門用語で言えば、内部収益率(IRR)などで示されます。
※内部収益率(IRR)とは?
内部収益率はInternal Rate of Returnの頭文字をとって、IRRと呼ばれています。
IRRとは、物件への投資額と実質収入(経費等を差し引いた収益)、売却時の価格まで加味して得られる指数のため、全事業期間での投資に対するリターンを把握するのに役立ちます。
言い換えれば、単年度の利回りではなく、購入から売却までの全事業期間の損益を加味し、不動産投資から得られる純収益の投資額に対する平均利回り(年)のことです。
狙い目は、なぜか空室率の高い物件・家賃が低い物件
家賃設定が適切で、間取りや住宅設備なども賃貸ニーズとは乖離していないと思われるのに、なぜか空室率が高い物件があります。また、間取りや住宅設備などが賃貸ニーズとは乖離していないと思われるのに、なぜか家賃設定が低い物件があります。
その理由は、管理会社が怠慢で募集活動もしっかりとせず、または物件の売主個人が自分で建物管理を行なっているケース(自主管理)が想定できます。
このように、ちゃんとした管理会社に建物管理を委託していなかった物件は意外と多く存在し、高い利回りで売り出されるケースがあります。
もし、そのような物件に出会えたら、お買い得物件になり得ます。
ちゃんと募集すれば満室になる可能性がありますし、家賃設定の低い物件は家賃UPの可能性が十分考えられるからです。結果として、物件購入時の利回りをUPさせることができるのです。
まとめ
不動産投資を勉強し、これから物件を購入しようとする方にとって、最初に考えることは、「どんな物件を選べばよいか?」でしょう。
当然、利回りの高い(儲かる)物件を優先的に探しているのではないでしょうか?
しかし、ここに落とし穴があります。
原則、利回りが高い物件とは、リスクが高いから利回りが高いのです。
逆を言えば、リスクが低い物件は利回りが低くなるのです。
なぜなら、利回りの高い物件とは、リスクを加味すると投資に対する収益性が確保できないため、利回りを高くしなければ誰も買ってくれない(売れない)という物件の可能性があるのです。
利回りが高い物件探しは、リスクが高い物件探しをしている可能性があることを理解しましょう。
大切なのは、利回りの高い・低いにこだわり過ぎず、物件の将来性および自己資金と借入による資金計画を含めた収支・収益性も併せてチェックすることが重要です。
どんなに良い立地の物件でも、収支が回らない物件ではリスクがあるという事です。
更に、プロである不動産業者も不動産投資で失敗します。当然、プロではない会社員の方は失敗するリスクが高くなります。よって、初めて不動産投資を行う会社員の方の場合、利回りの高さで「儲かる」という視点ではなく、「安定性」という視点を重視しましょう。
特に、副業として不動産投資を考えている会社員の方は安定性が最重要です。
不動産投資で儲かることを追求すると、「副業」ではなく不動産業者のような「仕事」になってしまいます。つまり、本業の仕事がおろそかになる可能性が考えられますので。
不動産投資は、利回りが高いに越したことはありませんが、利回りにこだわり過ぎず他の要素も正しく理解し、安定性を重視した物件選びをすることが大切です。