不動産投資でフルローンは組める?銀行融資の注意点を解説
不動産投資におけるフルローンとは、自己資金ゼロで全額借入金によって、不動産投資に必要な資金をすべて銀行からの融資でまかなうことを指し、全額借入を意味します。
不動産投資は、自己資金が多くないとできない投資ではなく、一般的には金融機関による融資を活用して行われており、少ない資金で大きな投資ができるのです。
不動産投資における物件購入に必要な資金は、物件価格である土地・建物の代金だけではありません。
では本当に、自己資金ゼロの「フルローン」で銀行が融資をしてくれる可能性があるのか解説していきます。
不動産投資に必要な経費と、銀行融資の必要条件
まずはじめにアパート・マンションの不動産投資を行うためには、実際どのような経費がかかるのか把握する必要があります。
①登記費用(土地建物の所有権移転、銀行借入の抵当権設定等)、
②司法書士手数料、
③損害保険料(火災保険、地震保険)、
④銀行手数料、
⑤業者の仲介手数料、
⑥印紙代、
⑦固定資産税・都市計画税の清算金、
⑧不動産取得税等
ざっと、見積もっただけで多くのの諸費用がかかり、これらは一般的に物件価格の7~10%程度が必要と言われています。
フルローンでの支払い
フルローンでの支払いは、一般的に物件価格相当を金融機関の融資で調達し、諸費用は自己資金というケースと、諸費用を含めて全て融資でまかなうケースの2通りの内容で使われているようです。
諸費用についても銀行融資でまかなうフルローンを考えられている方がいるかもしれませんが、よほど金融機関からの評価が高い属性や物件でなければ難しく、また融資条件が悪くなる可能性もあり、かなりハードルが高くなります。
実際は、ある程度の自己資金が必要だと理解しましょう。
フルローンを組んで5,000万円のアパートを購入する場合、諸費用には350万~500万円の自己資金を用意する必要があります。
また、銀行融資を受ける前に、物件の売買契約を締結しますが、その際、「手付金」という売買代金の一部を支払う必要がある場合があります。
金融の引き締めによる影響
金融庁の引き締めに追い打ちをかけ、2020年3月頃より、新型コロナウイルスの影響による不安感の高まりから、自己資金をお持ちの方でもフルローンで不動産投資をしたいと言われる方が多くいらっしゃいます。
確かに、手持ち資金0で資産形成できるのは魅力的ですし、「フルローンで不動産投資を実現!」などといった話も聞きます。
ここで、少し考えていただきたいことがあります。
不動産投資における一番のリスクは、自己資金のみでの投資ではなく、借入を活用した投資です。
つまり、ご自身の資本(資金)の一部を運用するのではなく、他人(金融機関)の資本を使って大きな投資・取引ができることに問題があるかと思います。
不動産という物の価値に対しての資金調達ですが、運用は家賃収入というものから生み出される収益が原資になるので、他の投資と異なり、不動産投資は物件を手に入れてからが本当の始まりです。
原資となる家賃収入がなければ、返済はできず、手に入れた不動産を手放すことになってしまうだけでなく、手に入れたタイミングと比較してモノの値段が下がっていたら、負の資産(借入)だけが残ることになります。
借入は、必ず返済しなければならないものであり、このことをしっかり認識し不動産投資を行うべきです。
キャッシュフロー(手取り収入)の悪化要因を理解しよう
不動産投資ではキャッシュフローが最も重要と言っても過言ではありません。
この現金の流れである収入と、返済額の関係が悪化すると賃貸経営も息詰まるからです。
賃貸経営での悪化要因を把握する重要性について解説していきます。
不動産投資は買ってからが本当の始まりのため、一度始めたら額も大きいことからすぐに「やめた」とはいきません。そのため、しっかりとキャッシュフローの悪化要因を理解しておきましょう。
金利変動リスクによる影響
長期的な視点で、銀行から借入に内在するリスクは、金利変動リスクと言えますです。
金利変動リスクは、将来金利が上がってしまったら返済額が増え、手取り収入に影響がでることは、多くの方がご理解していることと思います。
返済方法による所得税への影響
もう一つ、返済方法による所得税への影響があります。
通常、借入は元利均等返済を採用するのが一般的ですが、元利均等返済とは、毎月の返済額(元金+利息)が一定(均等)な返済方法です。月々の返済額が一定のため返済計画が立てやすいというメリットがあります。
返済当初は利息の割合が大きく、元金はなかなか減りませんが、後半は利息が少なく元金返済が多くなります。
キャッシュフロー上は、当然利息も元金返済もお金が出ていく支出ですが、申告上は利息のみの経費となります。元金相当分は経費ではないのです。つまり、税引き後の収入から元金返済をするという事です。
よって、実際の支出があるのに経費は少なく、損益上の利益があるため課税対象も大きく、結果として所得税が増加します。
建物が古くなり、家賃が下落すれば当然キャッシュフロー上の手取りは少なくなり、損益上の利益は増えているので所得税が上がってしまうのです。結果、少ない手取りなのに所得税が多いため、キャッシュフローはマイナスになることがあります。
お金の支出を伴わない経費「減価償却費」
お金の支出を伴わない経費「減価償却費」というものがあります。
建物は古くなると価値が下がるという事で、お金の支出を伴わない経費が発生しています。
設備系は一般的に15年での償却なので、15年以降は経費がないため損益上の利益が増え、所得税も増加します。
このように、取得当初より建物が古くなると支出が増えることになります。借入返済や税金の納付は、お金がないからとストップするわけにいかないので、これにより返済が大変になる原因となります。
絶対にしてはいけない、不動産投資ローンの判断基準
「手持ち金がないからフルローンで不動産投資」という考え方は一切やめてください。
他の投資と同様に、手持ち金がないなら不動産投資はすべきではありません。
「手持ち金はあるけど、低金利時代なのでフルローン」が正解です。
不動産投資でフルローンが組めるのはこんな場合
2022年5月時点において不動産投資でローンを組む場合、自己資金がおおよそ30%必要となります。
これは、金融庁からの融資関連の引き締めや、かぼちゃの馬車事件以外にも、新型コロナウイルスの影響により、アパートローンにおける審査基準が厳格化されたことも影響しています。
しかし、自己資金が少ないから不動産投資はできないのかと言えば、そうではありません。ご自身の属性ばかりではなく、家族・世帯・親族全体での属性、資産状況を見て、金融機関は融資条件を審査しますので、一概に自己資金が少ないからとあきらめる必要はありません。
例えば、親世帯がすでに不動産事業を行っている方、つまり信用情報が高く、信頼性の高い方は融資を受けやすいと言えます。
サラリーマンがでフルローンで不動産投資を始める3つの方法
ではサラリーマンがフルローンで不動産投資を始める方法はないのでしょうか?
フルローンを受けられる条件以外に、不動産投資を始めやすい物件選びの方法をご紹介します。
方法1:販売価格よりも銀行評価の高い物件を選ぶ
物件を選ぶ際には販売価格と銀行評価の両方を確認し、銀行評価の方が高い物件を選びましょう。
銀行評価が高いという事は、担保評価や収支が良いと判断され、フルローンが利用しやすくなります。銀行評価の目安として、土地の値段は路線価、建物は固定資産税評価額を基準にして比較してみて下さい。
方法2:投資総額の低い中古物件を探す
少しは自己資金が必要ですが、なるべく投資額の低い物件を選ぶことがポイントです。
方法1の銀行評価が高くなる物件は、中古物件の方になる可能性があります。よって、フルローンは中古物件狙いをお勧めします。
基本的に中古物件は新築物件と比較すると、価格は安く・利回りが良い物件となります。
最近は、新築または築浅を希望される方が多く、実は中古物件がねらい目だったりします。なぜなら、需要と供給のバランスで物件の市場価格が影響するため、人気のある物件であれば、売主は高く売ろうとするため、おのずと高くなるのです。
中古物件は、古くて修繕がかかる・入居者に人気がない・買っても壊れて長期所有に向かないなど、デメリットを多く考えられます。中級者向きなので、人気がそれほど高い訳でもなく、購入しやすい物件価格になっているものも市場には多く存在します。
掘り出し物が潜んでいる場合も
中古物件でも長期修繕が適切に行われており、リフォームやリノベーションを行ったものならば、新築と同じくらいの賃料を得ることも可能です。
ただし、何でもかんでも中古物件なら良いという事ではなく、初めての不動産投資ならば、優良な業者に再生された物件を紹介してもらった方が安心です。
おすすめの中古物件
中古物件のメリットとして、建物は古くなっていますが、土地は古くなることはないのです。
手ごろな価格であれば、土地が30坪から50坪以内の戸建て用地として売却しやすい土地面積の規模でアパートが建っている中古物件を選ぶことで、総額も抑えられ、将来売却するときも売却しやすくおすすめです。
物件価格が一般的に売り出されている土地価格相場よりも低い金額で物件が売りに出されているケースがありますが、これは投資目的に見合うのであれば、お勧め物件です。
- 相場・市場価格よりも安い購入代金なので、担保評価もでやすい
- 万一の時、土地だけにして売却すれば投資金額を回収しやすい(一時金を得やすい)
まとめ
不動産投資の融資条件は、不正融資や金利政策、市況など様々な影響を受け、審査が厳格化されている傾向にあります。それに伴い、今まではフルローンで銀行融資を受けることは、非常に難しくなっています。
フルローンによる融資が受けられるか、受けられないかということではなく、フルローンでないと不動産投資が行えない状況は、やはりすべきではありません。
なぜなら、不動産投資にはリスクが伴うものだからです。また諸経費については、そもそもローンが組めませんので、一定の自己資金は必要となります。
不動産投資を行うなら、リスクを犯したフルローンではなく、是非、自己資金を準備して臨みましょう。