注意!忘れがちな不動産取得税はいつ払う?金額はいくらになる?
土地や家屋などの不動産を取得すると取得代金だけでなく、
- 仲介手数料
- 不動産登記費用
- ローン手数料等
- 火災保険料
- 印紙代
などの様々な経費が発生しますが、その代表的なものに「不動産取得税」が挙げられます。不動産を取得してから数か月後に多額の金額が書かれた納税通知書が納税者のところに届くため、不動産取得税の存在を忘れていたという方も実際多くいらっしゃいます。そこで今回は、「不動産取得税はいくらになるのか」「いつ支払うのか」などの疑問について詳しく解説していくので、参考にしてください。
1 不動産取得税とは何か
不動産取得税とは、不動産を取得した者が都道府県に対して支払う税金です。ここにいう取得とは、移転登記が存在するかどうかに関係なく、また有償か無償かどうかも問われません。さらには、売買により取得した場合に限らず、贈与により取得した場合や他の資産との交換により取得した場合なども含まれます(ただし相続による取得の場合は非課税)。
2 不動産取得税の申告と納税
不動産取得税の申告にあたっては不動産を取得した日から60日以内に、取得した不動産の所在地の市町村長を通じて都道府県税事務所に申告をします。その後郵送されてくる納税通知書により金融機関やコンビニなどで納税を行います。なお不動産取得税は取得という行為に対して課税されるものであるため、納税は1度のみとなります。
3 不動産取得税の納税時期、納期限は?
不動産取得税の納税時期や納期限は、都道府県単位で異なります。不動産の取得後およそ半年後というところもあれば、1年半後とかなり遅い場合もあります。また、納期限については納税通知書の送付後60日以内というのが一般的ですが、都道府県によっては30日以内、20日以内という場合もあります。(詳しくは、不動産が所在する都道府県のホームページで確認できます。
4 不動産取得税の計算方法
不動産取得税額の計算は「課税標準額×税率」で計算されます。ここにいう課税標準額とは、税額を計算するための基準となる額であり、原則として固定資産税評価額のことを指します。
固定資産税評価額とは、不動産にかかる税額計算の基礎となる額のことをいい、不動産の時価よりは低い金額に設定されます。土地の場合は時価のおよそ7割、建物の場合は時価の5〜6割とされています。また、税率については土地の場合も建物の場合も原則として4%です。
「土地・建物の不動産取得税 = 固定資産税評価額 × 4%(原則)」 |
4-1 受けられる特例
土地および住宅については2021年3月31日までに取得した場合には、税率を3%として計算することとされています。
「土地・建物の不動産取得税 = 固定資産税評価額 × 3%(2021年3月31日まで)」 |
なお、事務所や店舗などの住宅以外の建物については原則どおり4%で計算します。
- 課税標準額
宅地に関する課税標準額の特例 | 土地の中でも宅地の場合の課税標準額は、固定資産税評価額×として計算します。ただしこの特例については現行2021年3月31日までに取得したものに限られます。 |
住宅に関する課税標準額の特例 | 建物の中でも住宅の場合の課税標準額は、一定の要件の下で課税標準額を軽減する特例が設けられています。取得した住宅の新築日によって固定資産税評価額から一定の額を控除したものが課税標準となります。 |
「住宅に関する課税標準額の特例」で受けられる控除額の具体例を挙げると以下の通りです。
1997年4月1日以後に取得した住宅の場合 | 1,200万円 |
1989年4月1日〜1997年3月31日までに取得した場合 | 1,000万円 |
1985年7月1日〜1997年3月31日までに取得した場合 | 450万円 |
1981年7月1日〜1985年6月30日までに取得した場合 | 420万円 |
その他にもありますが、新築した日が古くなるほど控除額が小さくなります。ただし取得した新築住宅が認定長期優良住宅に該当する場合は、固定資産税評価額から「1,300万円」を控除した額が課税標準額になります。
この特例適用を受けるための要件は以下の通りで、①〜③のすべてを満たす必要があります。
①当該住宅の取得者が居住用、または別荘として使用するためのもの
②1982年1月1日以降に新築されたもの、または1981年6月1日以降に適用された新耐震基準に適合したもの
③住宅の延べ床面積が50㎡から240㎡以下であるもの
なお、延べ床面積には車庫や物置部分の面積も含みます。また、マンションの区分所有のように共用部分がある場合には、専有部分の面積で按分したものを加算します。
4-2 新築住宅用の土地を取得した場合の不動産取得税の軽減措置
軽減措置とは前述した課税標準額や税率の軽減ではなく、税額そのものを軽減する措置を指します。
・不動産取得税=課税標準額×税率−「控除税額」
以下による算式で求めた額のうち、いずれか多いほうの額を控除税額とします。
①45,000円(45,000円に満たない場合はその金額)
②土地1㎡当たりの価格×住宅の延べ床面積の2倍(最大200㎡)×3%
ただし、2021年3月31日までに取得したものに対しては、土地1㎡当たりの価格××住宅の延べ床面積の2倍×3%で計算します。宅地に関する課税標準額の特例とのバランスを図らないと、不動産取得税が限りなくゼロに近くなるために取られた措置です。
5 不動産取得税の非課税
不動産を取得すれば必ずしも不動産取得税がかかるわけではありません。一定の要件を満たす不動産を取得した場合には不動産取得税が課税されません。その例を挙げると以下のようなものがあります。
①相続によって取得した場合
②法人の合併等の組織変更によって取得した場合
③公共の用に供する道路等の用地を取得した場合
④宗教法人、学校法人、社会福祉法人等により本来の事業の用に供する不動産を取得した場合
6 不動産取得税の免税点制度
不動産取得税の課税標準額が以下の金額に満たない場合には不動産取得税を課さないこととされています。この金額のことを「免税点」といいます。
①土地を取得したときは10万円(ただし、土地を取得した者が1年以内に当該土地に隣接した土地を取得した場合は、その分も合わせて10万円)
②家屋を取得した場合で、新築や増改築によるもののときは23万円(共同住宅等の場合は1区画分の取得)
③家屋を取得した場合で、新築や増改築以外によるもののときは12万円(共同住宅等の場合は1区画分の取得とします)
7 不動産取得税の納税猶予制度
取得した不動産が以下の要件に該当する場合には、減額予定申告を行うことによって納税を猶予することができます。納税猶予とは、不動産取得税を納税しなくてもよいということではなく、支払時期を先延ばしすることを指します。土地を取得した後、その土地の上に住宅を取得する予定がある場合、その住宅が新築住宅か中古住宅かで猶予期間が異なります。
7-1 新築住宅を建築する場合
土地を取得した後3年以内に、その土地の上に新築住宅の不動産取得税軽減措置に該当する住宅を建築する予定がある場合は、土地の取得日から3年を限度に納税猶予することができます。つまり、3年以内に上記の住宅を新築しなければ軽減措置が受けられないということになります。
7-2 耐震基準適合基準を満たした中古住宅を取得した場合
土地を取得した後1年以内に、その土地の上に耐震基準適合既存住宅の軽減措置に該当する中古住宅を取得する予定がある場合は、土地の取得日から1年を限度に納税猶予することができます。
7-3 耐震基準に適合していない土地、その土地の上に新耐震基準に適合していない中古住宅を取得し、その後に耐震改修を行う予定がある場合
当該土地または住宅の取得日から6か月を限度に納税猶予することができます。納税猶予の要件はそのほかにも細かい規定がありますが、いずれにしても住宅が新耐震基準に適合させることを目的とした納税猶予規定となっています。
8 新築住宅および土地の税額軽減まとめ
新築住宅および土地の税額軽減をまとめると次のようになります。
建 物 |
軽減措置 |
不動産取得税 = (固定資産税評価額 − 1,200万円) × 3% |
軽減要件 (増改築含む) |
· 居住用その他住宅全般に適用(自宅・セカンドハウス・賃貸アパート・マンションなど) · 課税床面積が50m2以上240㎡以下(戸建以外のアパート・マンションなどの貸家住宅は1戸当たり40m2以上240㎡以下) |
|
土
地 |
軽減措置 |
不動産取得税 =(固定資産税評価額 × 1/2 × 3%) − 控除額(下記AかBの多い金額) A = 45,000円 B =(土地1m2当たりの固定資産税評価額 × 1/2) × (課税床面積 × 2(200m2限度)) × 3% |
軽減要件 |
· 上記「建物」の軽減要件を満たすこと · 取得から3年以内(2020年3月31日までの特例)に建物を新築(土地先行取得の場合) · 土地を借りるなどして住宅を新築した人が新築1年以内にその土地を取得すること(建物建築先行の場合) |
9 まとめ
不動産取得税は不動産の取得代金に比べれば少ない金額ですが、資金シミュレーションを立てる上では重要な経費の一つであり、日々の生活や資産運用にあたり資金ショートにならないように考慮する必要があります。また、不動産取引の活性化という政策的な観点から不動産取得税を減額するための規定が設けられていますが、実際にはここに記載している規定よりも細かい規定が設けられていますので、不動産取得税の申告の際には不動産会社や税理士、都道府県税事務所の担当者といった専門家に減額要件や納税猶予要件に該当するかなど、遠慮なく確認することをおすすめします。
また、不動産の所在する都道府県ホームページでも不動産取得税について確認できますので参考にしてください。