不動産投資初心者が狙われる!サブリースを悪用した勧誘とは!?
不動産投資で収益の安定化のために『サブリース契約』を検討している方も少なくないでしょう。※『サブリース契約』とは不動産会社が貸主から賃貸物件を一括で借り上げ、入居者に転貸する契約。詳しくは後述。
確かにサブリース契約では毎月一定額の家賃収入が確保できる点は魅力ですが、悪徳業者によるサブリースを悪用した勧誘も見られるため注意が必要です。
この記事では昨今ニュースでも取り上げられる「不動産投資におけるサブリース」について、サブリース契約の内容、利用する際の注意点などをご紹介します。サブリース契約は便利だけど最近のニュースを見ていると不安……と感じている方はぜひ参考にしてください。
サブリースを悪用した勧誘の手口
最近、一部の不動産会社による施工不良問題や家賃保証を謳ったシェアハウス問題が世間を賑わせています。毎日新聞の2019年2月17日付の記事「投資知識ない若者がターゲット 『サブリース』悪用の勧誘広がる」でも不動産投資に関する詐欺について注意を促しています。すっかり悪いイメージが定着してしまったサブリース契約ですが、契約自体の問題というよりそれを悪用した手口に注目が集まっています。
不動産投資におけるサブリース契約とは
サブリースとは、不動産会社等が賃貸物件を所有者から(一括)借り上げ、空室の有無に関係なく毎月一定の賃料をオーナー(物件の所有者)に支払うことを前提とした転貸のことを指します。オーナー(投資家)にとっては、将来の家賃収入の低下や管理の手間が軽減されるため、建物の購入時に不動産会社とサブリース契約を結ぶことがよくあります。
サブリース契約締結後、不動産会社(もしくはサブリース会社)が入居者を集め賃貸し、家賃の回収や建物の維持管理等をオーナーの代わりに行います。例えば家賃が20万円だったら手数料などを引いた額(不動産会社ごとで異なるが17万円程度)をオーナーに支払うといった形態です。
悪用されたサブリース案件の概要
毎日新聞が報じたサブリース案件の内容とは、とある不動産会社の元社員がサブリース会社と連携し、偽の内容のサブリース契約で顧客を勧誘し、不正に契約を結ばせたというものです(なお不動産会社の組織的な関与はなく、元社員とサブリース会社による行為とされています)。
元社員Aは正規の契約書以外に正式な価格とは異なる偽の契約書を作成し、その差額を架空の会社に入金させ、その一部がAの連携したサブリース会社(Y社)に渡っていました(顧客を紹介したブローカーなどへも入金)。たとえば、オーナーとの正規契約書が3,400万円、偽の契約書が4,100万円だった場合、その額で融資を受けさせ、差額の700万円が架空の会社に入るようになっていました。
Aは偽造印などを使用して偽の契約書を作成し、それを元に固定金利型住宅ローン「フラット35」を申請しています。投資物件ではフラット35は利用できないため、Aは顧客に住民票を物件の場所へ移すように指示していました。このような手口が約150件も行われており、架空会社へは1件当たり200万円~700万円が入金されたと報じられています。
オーナーはもちろん二重契約であるとは知らずにAの指示に従うままに書類を提出し契約しましたが、相場よりも高い価格で物件を購入させられたため、表面化しない損失(相場3,400程度の物件を4,100万円で購入していた場合は実質700万円の損になる)と、不正な二重契約にもとづく住宅ローンへの一括返済の可能性を抱えることになりました。
さらに、今後の家賃収入の入金が不安定になる可能性もあります。入金があってもサブリース会社から急に契約解除や家賃の減額が行われれば賃料が大幅に減少したり途絶えたりしてローンの返済負担が増大するでしょう。
不動産投資の経験のある方なら「ちょっと怪しい」と警戒したくなるところですが、若い世代の不動産投資初心者などは、契約内容が適正か否かを判断するのは難しいといえます。このように悪徳業者は知識や経験のない方、若い方や高齢者などをターゲットとして勧誘してくるため、不動産投資など大きな金額の契約を交わす際は細心の注意が必要になります。
サブリースを安全に活用するポイント
不動産投資を行う際に悪徳業者からの甘い誘いに乗らず、安全・安全に投資をするためのポイントを見ていきましょう。
宅地建物取引業者として登録されているかを確認する
不動産投資でも詐欺を行うような悪徳業者が存在しているため、その存在を認識し彼らの甘い言葉に乗らないように注意する必要があります。投資物件の購入や売却は一般的に不動産会社を介して行われ、サブリース契約ではその不動産会社や関連会社などと結ぶケースが多くなります。そのため不動会社等が悪徳業者であれば、大きな被害を受ける恐れがあります。
不動産会社が悪徳業者であるかどうかは、たとえば、宅地建物取引業者としての免許番号を有しているか、またその免許番号に間違いがないかで見分けることもできます。免許番号とは各不動産業会社に付与される登録番号です。免許番号を保有していなかったり、偽装している場合は要注意でしょう。
免許を取得しているからといって絶対に安心できるわけではないですが、免許の取得からの期間が短い場合ではその会社の実績や評判などを確認しましょう。一方、保有期間の長い会社の場合でも、サブリース契約での実績、トラブル件数(訴訟等)や口コミなどから評判をチェックするようにしましょう。
投資物件の良し悪しを判断する
不動産投資ではサブリース契約を検討する前にまず投資対象の物件が本当に収益が得られる物件かどうかを判断することが大切です。不動産投資の基本的な知識を身に付けると、悪徳業者の物件か、成功しそうにない物件か、といった点が見極めやすくなります。
たとえば、以下のような観点から収支計算を行い、本当に収益が得られる物件かどうかを判断する力が求められます。
【判断するポイント】
- 物件価格や家賃が相場と比べて適正か
- 立地・周辺環境はよいか
- 入居者ターゲットの設定に間違いはないか
- 空室率を確認したか
- 管理費・修繕積立金に問題ないか
- 借入金利は高くないか
サブリース契約の特徴を知る
サブリース契約は物件管理の手間を省き、一定期間・一定額の家賃収入が保証されるため、投資家は収益の見通しが立てやすく、空いた時間を活用して投資活動に専念できるといった魅力があります。
ただし前述したようなトラブルに巻き込まれることもあるため、サブリース契約を結ぶ前には以下の点には注意しましょう。
【契約前に注意すること】
- 契約後の賃料の値下げの可能性やその時期
- 契約期間内での解約の可能性
- 契約後の様々な費用
たとえば「原則20年間は賃料を一定とする」との謳い文句でも、契約書には「契約後○年以降では経済状況の変化等により賃料の変更を可能とする」と記載されているケースがほとんどです。
そのため「家賃保証の免責期間はあるのか」「どのよう条件で変更されるのか」「変更はオーナーとサブリース会社の合意に基づくのかどうか」などの点を必ず確認するようにしましょう。また、契約期間中の解約の内容も重要で解約時の違約金などのチェックも必要です。
サブリース会社が一方的に解約できる場合、オーナーは解約された後の家賃収入は自らの管理で確保しなければなりません。逆に解約できない場合、売りたい時に物件を売却しにくくなります。
このほか原状回復費や修繕費などの費用面でトラブルになることもあるため、その契約書の内容をしっかり確認することが大切です。
まとめ
悪徳業者が投資初心者を対象に「20年間の家賃保証、元手なし、年収○○万円からでも不動産投資ができる」との甘い言葉で勧誘し、サブリース契約を迫るケースは少なからずあります。そのような業者の言うことは鵜呑みにせず、サブリース契約を結ぶ際には慎重に検討するよう心がけましょう。